第14話 グラタンとリン

『ピンポーン!』インターホンが鳴る。

「だれかな?」 

レイは手を拭きながら玄関に向かう。

「おまえかい!なんでピンポンならした?勝手に入ってくればいいだろうが。」

玄関で誰かが怒られている。

「急に入っていったらおどろくかと思って。」

男の人の声。リン君だろう。

「おどろくか!」

一喝された。レイは急いで台所に戻る。レイのあとからこちらに向かってくる足音。リン君だ。少し雰囲気が変わった。

「お久しぶりです。」

「久しぶりですね。大学生になったんだね。」

「はい、勉強してます。よろしくお願いします。」

レイは台所からこっちを見ている。

「何が『勉強してます。』だよ。わけわかんないこと言うんじゃない。まともに会話できないのか。」

「なんかお姉さんいつもと違わない?」

ナズナはキョトンとして言った。

「いえ、前からあんなです。ふだん猫かぶってるんです。きっと。」

荷物を床に置いてコートを脱ぎながら言った。

「それにナズナさん来てるからうれしいんですよ。」

「おまえだろ、それは!」

レイに聞こえていたようだ。

「ああ、お母さん、焦げちゃったよ。リンがピンポン鳴らすからだ。これリンの分ね。」

リンの姉はタチの悪いことを言っている。

「そんないじわる言わない。よけといて。あとで食べるから。」

沙絵はやさしい。

「リン、箸とスプーンとフォーク出しておいて。」

レイはリンに声をかける。

「わかったよ。荷物置いてからでいい?」

「いいよ。」

リンは荷物を置いて戻ってきた、手を洗って、そそくさと箸、スプーン、フォークを並べている。


「わたしも何か…」

ナズナが腰を上げた時、食事が運ばれてきた。

グラタン、スープ、サラダに唐揚げ。

「さあできたよ。座って。」

居間の低いテーブルに料理は並べられる。

「いただきます。」

マカロニをフォークですくい食べる。

「どう、おいしい?」

「うん、おいしい。」

モグモグしながら応える。

「牛乳と小麦粉からつくったんだよ。グラタン。すごくない?」

「すごいね。」

レイはリンにも尋ねる。

「どう、うまいか?」

「うん、うまい。」

「寮のご飯はうまいのか?」

「うん、うまいよ。」

レイはうれしそう。

「よかった。たくさん食べてよ。お代わりあるからね。」

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