読み合いの里

       梅襲う風なまぐらし夜を聞く


 今回の「読み合いの里」の企画では、先ず、友未の不注意から皆様に混乱とご迷惑をおかけしてしまいましたこと、お詫び申し上げます。この企画では頭初、ご参加頂いた皆様がたに、他の方々の作品にもより関心をお持ち頂きじっくりと読み合って頂ければとの思いから、下記の通りのご案内を掲載させて頂いておりました。


  ↓ (以下、原文全文) ↓


今回は読み合い企画です。参加者は一番面白かった他の参加者の作品を三つ選んで、必ずコメントを差し上げて下さい。レビューは必須ではありません。主催者は作品参加いたしません。


【詳細】

1.ご自身で気に入っておられるのに、あまり読まれていない隠れ作品をお寄せ下さい。☆の数やPV数の制限は特にございません。ジャンル、テーマなどは概ねご自由ですが、以下の条件を必ずご確認のうえご参加下さい。

2.文芸寄りの企画です。ライトノベルなどはご遠慮下さい。純文学、エンタメ文芸、児童文学、アングラなどを歓迎いたします。レイティングにつきましては、過激な表現があってもかまいません。

3.テーマ、ジャンルはご自由です。詩や詩歌は除きますが、ノンフィクションでも結構です。

4.一篇4千字以上1万5千字程度以下の、ご参加時点で完結済みの短編、おひとり様一作でお願い致します。

5.11月10日までに、お好きな三つの作品に必ずコメントをお送りください。❤マークだけでなく、感想やご意見を文章でお伝えください。

6.参加者が30名さまを越えましたら、その時点で作品募集は打ち切らせて頂きます。ただし、企画自体は期日まで続行させて頂きます。


お寄せ頂いた作品は完読を目指し、特に友未好みだった作品は、企画終了後、友未の「ストックブック」中の「隠れの里」のページに、作者名と共にご紹介させて頂きます(今回の「ストックブック」は3月10日ごろUPの予定です)。予めご了承の上、ご参加頂ければ幸いです。お便り、ご質問などは近況ノート、「隠れの里」のページ(→https://kakuyomu.jp/users/betunosi/news/)までお気軽にお寄せ下さい。


  ↑ (終) ↑


 所が企画開始数日後、カクヨムさまより、思いがけず、内容に規約違反に当る部分がある旨のご指摘を頂き、結局次の様に修正させて頂くことになって、ご迷惑をおかけしてしまった次第です。


  ↓ (以下、修正版全文) ↓


∮ お詫び と 変更 ∮


昨1月23日、カクヨム運営さまより、当企画が【ガイドライン「自主企画の利用について」の「参加者同士で相互評価を確約している」】に抵触するとのご指摘がありました。該当部分として挙げられていた【・参加者は一番面白かった他の参加者の作品を最低三つ選んで、必ず応援コメントを差し上げて下さい。・3月10日までに、お好きな三つの作品に必ずコメントをお送りください。❤マークだけ

でなく、感想やご意見を文章でお伝えください。】の二点は今回の企画のねらいそのものだったのですが、止むを得ず削除させて頂き、よりゆるやかな下記の内容に修正、継続させて頂きます。すでに応援コメントをお送り頂いていたり、真剣な読み合いを期待してご参加くださった皆様方に、主催者の不注意からご迷惑をおかけしてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。


∮ 修正後の企画内容


ご自身で気に入っておられるのに、あまり読まれていない隠れ作品をお寄せ下さい。☆の数やPV数の制限は特にございません。今回は読み合い企画です。主催者自身は作品参加いたしませんが、お寄せ頂いた全篇の完読を目指し、特に友未好みだった作品は、企画終了後、友未の「ストックブック」

→ https://kakuyomu.jp/works/16816452218770886042 中の「読み合いの里」のページに、作者名と共にご紹介させて頂きます(今回の「ストックブック」は3月10日ごろUPの予定です)。予めご了承の上、ご参加頂ければ幸いです。


【詳細】

1.一篇4千字程度以上、1万5千字程度以下の、ご参加時点で完結済みの短編、おひとり様一作でお願い致します。詩や詩歌は除きますが、評論や批評でなければノンフィクション・ジャンルでも結構です。

2.ジャンルやテーマ制限につきましては、ロープレ系、テンプレ系、異世界転生系、恋愛もの(本格ポルノや笑いはO.K.)はご遠慮ください。新作/旧作、エンタメ/純文学、シリアス/コメディー、レイティングの有無などは問いません。過激な表現があっても結構です。

3.コメント内容につきましては、率直な善意の批評を互いに受け入れられる作者さまのみご参加下さい。

4.参加者がもし30名さまを越えましたら、その時点で作品募集は打ち切らせて頂きます。ただし、企画自体は期日まで続行させて頂きます。

5.読み合い企画の性格上、お寄せ頂いた作品の当企画開催期間中の途中退出はできる限りお避け下さい。


お便り、ご質問などは近況ノート、「読み合いの里」のページ →

https://kakuyomu.jp/users/betunosi/news/16818023211781829407 までお気軽にお寄せ下さい。


  ↑ (終) ↑


 友未自身が過去に一度、参加者全員が参加者全員の作品にコメントを送り合う少人数制の自主企画に参加させて頂いたことがあったがための不手際だったと反省しております。そうした混乱や、小うるさい作品条件などにもかかわらず、ご参加いただけました6名の皆様に新めてお礼申し上げます。

 さて、その中から、今回は、あまりにも高貴ではかないエロス文芸をご紹介させて頂きましょう。→ https://kakuyomu.jp/works/16817330660350778989


∮ オ・ソロイ/朝吹さま。「里」企画ではもう、お馴染みの作家さまで、いずれの作品でも純文学の感性で書かれた質の高いエンタメ文芸を愉しませて頂いております。きつすぎる純文学にも緩すぎるエンタメ文芸にも物足りなさを感じることの多い友未にとっては美学的親近性の高い「短編の名手」とお呼びしたくなる書き手さまのおひとりですが、とりわけ今回の「オ・ソロイ」は、そのはかなさ、美しさが真に迫って来る点で、朝吹作品の中でもダントツに素晴らしい傑作だと感じました。百合作品ながら、百合作品というよりエロス作品とも呼ぶべき香り高さ、気品に貫かれています。次回自主企画として「エロスの里第三回」を予定させて頂くことになったのも、実はこの名作に触発された結果なのでした。

 全体は前後二章からなっており、前篇では冒頭に描かれる時計草の異様な形状(生殖器官そのものであることを物語る露骨なその姿への言及が作品全体のテーマの中へ編み込まれて行きます)と、一帯にはびこるそのグロテスクな様にいきなり引き込まれてしまいます。そんな不気味な景色を背景に、入所当時八歳だったわたし「園子そのこ」と十歳年上の「苑子そのこさん」の姿が回想されはじめます。舞台は様々な事情に追われた女性ばかりが身を寄せ合って自給自足の共同生活を営むシェルターのような、名ばかりの宗教施設で、苑子そのこさんは母に連れて来られた園子そのこの世話役にして姉のような特別な存在になって行きます。


【 航也に頬ずりや口づけをされると、苑子さんにも同じことをされていたことを想い出す。苑子さんと違って男の顔には髭があって、剃っていても剃り残しがちくちくとこちらに刺さる。

 その航也がわたしの誕生日にお揃いの指輪を誂えて贈ってくれた。オ・ソロイだ。

 そう云うと、「お揃い」と訂正された。】 (原文より)


 苑子そのこさんとの関係の中で生れたその言葉。全篇を読み終えて振り返ると、少し切ない気分にさせられるタイトルです。「オ・ソロイ」なんていかにもそれらしい響きのある言葉だったのでそういう言葉があるのかと思わず検索をかけてしまいましたが、ノー・ヒットでした。

 小学校の通学路の山越えの送迎の折、苑子そのこさんは烏野豌豆からすのえんどうやナズナを笛や三味線にする方法も教えてくれました。


【 畦道で飽くことなく草笛を鳴らしているわたしを見詰め、苑子さんは妖しく微笑んだ。少し苦い味がするでしょう。憶えておいて。それは愛し合う時の味だから。】 (原文より)


 そして前篇はお風呂のエピソードで締めくくられます。


【 「今晩で千日目よ」

 へえ、千回も苑子さんと一緒にお風呂に入っていたのか。】 (原文より)


【 「苑子さん、わたしにもあれをして。園子ちゃんにするように、わたしにもして」

 或る日、掃除当番だったわたしが風呂場の脱衣所に入ると、高校生のしずちゃんが苑子さんの首に両腕を回して接吻をねだっていた。】 (原文より)


 後篇は喪失譚です。


【 わたしが中学の最終学年に上がる頃、苑子さんが施設から消えた。】 (原文より)


 この章では、控えめな前篇よりいくらか踏み込んだ描写で、幼かったわたしと「父親」との関係や、風呂場での百合シーン、「オ・ソロイ」のエピソードなどを交えながら、主として【 専門学校卒業と同時に施設を出て洋菓子店に就職し 】 、【 地方都市で何とか独り暮らしをして 】、 【 航也と結婚して子どもが生まれ 】、【 子育てに忙し 】く、【 すでにあの頃の苑子さんの年を超えた 】現在の視点から、ふたりの別れが淡々とした筆致で、けれども痛切に紡がれて行きます。


【 「必要以上の不健全な接触があったということでよろしいですね」

役所から来た人たちが、苑子さんを聴取している。誰かが告げ口をしたのだ。 】 (原文より)


 【 わたしが来る前に、ちょうどわたしのように苑子さんから可愛がられていた 】高校生の静ちゃんの密告なのでしょうか?


【 苑子さんは施設から姿を消した。追い出されたのだ。】(原文より)


 これらのエピソードは単に時系列順に並べられたものではなく、たとえば母親の金切声のシーンの直後に苑子さんの聴取場面が結び付けられるなど実に巧みに構成されているので起伏に満ちていました。さらに終盤では、優れて感性的、耽美的な美しい表現が畳み掛けられて、読む者をファンタスティックな感動へ導いて行かずにはおきません。甘美なはかなさと、ぽっかりと心に残された空白が余韻をかもす名作でした。


【 行方不明のまま見つからない苑子さん。今でもその名を心の中で呼ぶ。はるか遠い処にいる知らない若い女の名を呼ぶような気がわたしにはする。あれは性愛などとは違っていた。幼い少女を相手に、雛あそびをしていた苑子さん。

 御殿の中に棲んでいた無性の人形たち。妖精か天使を愛することが出来るのは、妖精か天使の存在を信じる者だけだ。

 わたしの園子ちゃん。

 その子。

 あなたはわたしの天使よ。

 オ・ソロイね。

 「その子」は誰にも何にも繋がらないまま、男女の性からも離れ、日陰に花を咲かせている。仄かな苦みのある草の味を漂わせ、想い出の中、廃墟に月のように浮いている。】(ラスト全文)


 この作品の中で最も好きな文章を一つ選べと言われたら、友未はためらいなく、【 隣家の軒先に吊るされた風鈴が鳴っている。すだれの隙間から日差しが針状に眩しく浮かぶ。】を選びます。筋書きからは離れた叙述なのに、目にした瞬間打たれました。こうした言葉たちに奥行きや立体感を与えられて、物語がディスプレイ平面からホログラムのように立ち上がって来るのを実感しました。


 余談ですが、この作品の性格について、朝吹さまご本人が、PV数が一向に増えてくれないと愚痴をこぼされつつ、「単館上映系の作品は大勢の読者に恵まれることはなくとも、たまに愛好して下さる方がいる」と、何とも巧いことをおっしゃっておられて感心しました。「単館上映」、然り、まさにそういう作品かもしれません。大ヒットはしなくても届く人にはちゃんと届くだけの内容があり、口惜しいことに友未にも届いてしまいました。単館上映で116PVもあればがまんしなければ!?










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