きれいごと抜きの人生論

第25話 いい年して処女とか童貞はいけないのか？

Ｑ　私は今まで性体験がありません。同性の友人から「この年齢で童貞は気持ち悪い」と批判しかされません。周囲では早くしたら勝ちという自慢がはびこっています。

なぜ私が悪いと批判されるのでしょう。最近は「私が性体験してないのがいけないんだ」とさえ考え始めています。

Ａ　「銀河鉄道の夜」の宮沢賢治、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロル、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の短歌の正岡子規は童貞だったと言われています。童貞であることは、オリジナリティーに富んだ彼らの創作に深い影響を与えているように思えます。

彼らは「セックス未経験者」ではなく、「セックスをしない、ということの経験者」でした。彼らもまた、「普通の男が童貞であることはおかしい」という常識を知っていたでしょう。

けれど、その「普通の常識」はどこからくるのでしょうか？　偶然なのか、それとも、自らの意志によってなのか、彼らは、「セックスをしないという経験」を選びました。

そのことで「普通」の人々が見たことのない世界を創ることができたのです。

性の未経験者であることであなたを批判する人たちは、世間の「普通」や「常識」を疑ったことがない、つまり、自分の頭で考えたことがない人たちなんだと思います。そんな人達の言う事なんか気にする必要はありません。犬が吠えているな、と思っていれば十分です。

ほんの少し前までは「女は結婚まで処女であるべきだ」とか「女は結婚したら専業主婦になるべきだ」というのが「常識」でした。自由に自分のペースで生きていけばいいのですよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　 （「誰にも相談できません」　高橋源一郎）

確かに昔は、結婚前に処女を失った女は、傷物として価値が下がる、という「常識」がありました（よく考えたら失礼な話です）。性体験の無い方が価値があったのです。今とは逆ですね。

人間に同調圧力をかけ、悩みの原因となる「常識」とは、かくもいい加減な代物なんです。気にする必要はありません。