第23話 宗教の癒し能力(その一例)
宗教は逆境によく効きます
”不況時代に、夫の給料は週給で平均18ドルであった(注:100年近く前のアメリカの話です)。夫は病気がちで欠勤も多く、収入はそれ以下のことも珍しくなかった。自分で建てた小さな家も人手に渡してしまい、食料品店には50ドルの借金ができた。
子供を五人もかかえていた。私は必死に近所の人々の洗濯物やアイロンがけの内職をして収入を補った。そして悩みが高じて健康を損ねた。
ある日、十一になる男の子が泣きながら、例の食料品店の主人から鉛筆を二本盗んだんだろうと責められた話をした。この子は正直で感じやすい性質だったが、多くの人の前で侮辱され、恥をかかされたのである。
私はこれには我慢できなかった。これまで耐え忍んできた数々の不幸を考えると、未来に何の希望も見いだせなかった。たぶん、私は悩みの為に一時的に錯乱してしまったに違いない。
私は洗濯機を止めて五つになる女の子を寝室へ連れて行き窓を閉め、隙間をぼろや紙くずでふさいだ。娘は「ママ、何をしているの?」ときいた。私は「隙間風が入るからね」と答えて、寝室のガスヒーターの栓を開いた。だが、火は付けなかった。
娘を抱いてベットに横たわると、娘は「ママ、おかしいわ。さっき起きたばかりなのに」と言う。「いいのよ。少しお昼寝しましょうね」と言って私は目を閉じ、ヒーターからもれるガスの音を聞いていた。
あのときのガスの臭いは一生忘れられない…………そのとき不意に、音楽が聞こえてくるような気がした。私は耳を傾けた。台所のラジオのスイッチを切り忘れていたのだ。
でも、そんなことはどうでもいい。しかし、音楽は続いていた。だれかが古い讃美歌を歌っていた…………
“いつくしみ深き友なるイエスは罪科つみとが憂いを取り去り給う
こころの悲嘆なげきを包まずのべてなどかはおろさぬ負える重荷を
いつくしみ深き友なるイエスはわれらの弱きを知りて憐れむ
悩み悲しみに沈めるときもいのりに応えて慰め給わん”
この讃美歌を聞き入っているうちに、私は悲惨きまわりない誤りを犯していたことに気付いた。私は自分一人で、あらゆる恐ろしい闘争に立ち向かおうとしてきた。祈りによって、すべてを神におまかせしようとしなかった。
私は飛び起きてガスを止め、戸を開き、窓を開けた。私はその日一日、涙にくれながら祈った。
私達は家を失って後、片田舎の学校の建物を月五ドルで借りて移らなくてはならなかったが、その時でさえ私は校舎に移れたことを神に感謝した。
とにかく雨露と寒さをしのげる場所が得られたことに対して感謝したのである。私は事態がそれ以上悪くならなくなったことを神に感謝した。そして、神は私の祈りを聞き入れてくださったと信じている。
なぜなら、すぐにではなかったが、事態は少しずつ良くなり、景気が回復するにつれて、多少は金銭のゆとりも出てきたからである。
私はある大きなカントリークラブの帽子預かり所に雇われるようになり、片手間に靴下を売らせてもらった。息子の一人は苦学を覚悟で大学に入学し。農場を見つけて、(アルバイトで)朝晩十三頭の牛の乳をしぼった。
現在、子供達はそれぞれ成人して結婚している。可愛い孫も三人になった。ガス栓をひねったあの恐ろしい日を思い出す度に、良くも危ない瀬戸際で目を覚まさせてくださったと神に感謝する。
あのままあの自殺行為に走っていたら、今日のこの喜びを味わうことはできなかったのだ!”
(「道は開ける」 D・カーネギー)
ですが宗教を選ぶときは慎重の上に慎重を重ねて何度も熟慮してからの方がいい。なんとかの科学とか、なんとかの塔とか、なんとかの証人とか、なんとかの学会とかは避けておいた方がよいと私は思う。
あなたは癒しを求める患者で、必要なのは癒しをあたえてくれる医者です。あなたの金銭と身体を利用しようとする連中の魔手に、くれぐれもひっかからないように!
ア〇ムではないが、ご利用は計画的に(笑)
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