第14話 幸よく快を制す
“誰でも幸福になることはできる。だが貧乏人には快楽はない”
”オレ達ははっきりさせようと思ったんだ。そうだろう? お前らには快楽なんて用意されていないんだぞ、と弱者にはっきり言いたかった”
(「愛と幻想のファシズム」 村上龍 講談社文庫)
さすが我らが龍様。お素敵な言葉ですこと、しびれるザンス! 一点の曇りもなく間違ってないザンスよ。ええ100%濃縮還元ジュースのように完璧にそのとおりなんです。
ですが龍様、一つ突っ込ませてもらっていいですか。果たして快楽とやらはそれほど絶対確実な真実なんでしょうか? 人間にとって。
龍様、あなたは憎い憎い唾棄すべき相手と10万円の超豪華会席料理を食うのと、初恋のドキドキするような甘酸っぱい思いをいだいている大好きな彼女とお金の無いデートで300円の焼き芋を二人で仲良く二つに割って食べるのと、あなたはどちらを選びますか?
うまいのは10万円の豪華和食です。間違いありません。まさしく快楽の粋を集めた代物です。
ですが選ぶのは焼き芋です。300円の焼き芋を二人で半分こして、ニコニコ笑いながら食べるのです。そっちのほうがうれしいから。
「うまい」よりも「うれしい」なんです。
快楽<幸福なんです。
十万円の快楽は三百円の幸福にあえなく敗北してしまうようなチンケな代物なんです。それが人間なんです。
快楽なんぞ幸福の無常の至福感に比べたらクソの役にもたちません。そして対象を金持ちや権力者に限定するケチな快楽と違い、幸福こそが無差別平等にすべての人間に与えられる特権なんです。
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