Bonds:ラグナロクⅡ~神獣戦争

白糸総長

プロローグ「お兄ちゃん」

 創星の記録──


 天地は大きな爆発によって生まれ。

 星々は廻り、ぶつかり、消滅しを繰り返した。

 

 そして人が生まれ、その信仰によって神が生まれた。

 神は人を見守り、人は神に縋り。

 創世の時よりその関係は続いていた。

 

 最初の人間が世界樹に残った実を摘み取るまでは──


 その行いは神の怒りに触れた。

 遥か昔、この宇宙が形を作る前の話。

 人間が神の支配を受けていた時。

 多くの世界が世界樹によって繋がれ。戦い、時には協力してきた。

 人より愚かだった神々が、巨人族との戦いを引き起こし、世界樹を破壊するまでは。


 宇宙そらが消えるまでは──

 

                  ⚔

 

                Bonds:ラグナロクⅡ~神獣戦争


                  ⚔


 さっきまで私の前に居たお兄ちゃんは、もうお兄ちゃんでは無かった。

 金色に光り輝きながら、ところどころ黄金の装飾をつけて、金色の髪を靡かせこちらを振り返る。


 俺はベンヌ。

 お前と世界を守る太陽の神獣──


 ──フェニックスだ






 一年前──


 「お兄ちゃん!もうご飯だって」


 「おう、今行く」


  明日から私は高校一年生になる。

  そしてお兄ちゃんは大学生になる。

  日笠家の食卓はいつも賑やかだ。お父さんもお母さんも笑顔で迎えている。

  

 「かがり、今日も雪かきありがとね」


 「うん」


 お母さんがお兄ちゃんにそう言う。

 そういえば、お兄ちゃんは雪かきがうまい。

 近所と比べれば、その差は一目瞭然だ。今日のような大雪でも、家の前には雪一つない。

 しかも時間が経っても積もらないのだ。

 私はその様子に少し疑問を持ったが、お兄ちゃんは夜にどこか出かけることがあるので、その時にやっているのだと思う。


 「明日はお前の入学式だろ?」


 「うん」


 お兄ちゃんがそう私に聞いてくる。

 いつもの優しい声で、ゆっくりと。

 

 「そうか。祝いになんか欲しいもんあるか?」


 「ないよ。ああ!じゃあ、お兄ちゃんがいっつも夜中に行く場所に連れてって」


 秘密にしているようなので、親に聞こえないように小声で耳打ちをする。

  

 「え?」


 お兄ちゃんはバレてないと思ったのか、少しビックリした顔をした。

 そして、今度は俯いて言う。

 

 「すまん。それは出来ない」


 「え~、いいじゃん」


 「ダメなんだ」


 「お兄ちゃんお願い」


 私は少しぶりっ子口調で言う。

 お兄ちゃんは私に弱い。気づいていない体を装っているけど、たぶんシスコン。

 今までお願いすればなんでも言うこと聞いてくれた。

 それなのに──


 「本当にごめん」


 「えっ」


 初めて断られた。

 まぁ、今まで断られない方がおかしいのだけど。

 お兄ちゃんがこんな些細なお願いを断ったのは初めてだった。

 

 「あっ、うん。私もごめん」


 「そうか」


 お兄ちゃんは先程まで悲しそうな顔をしていたのに、今は笑顔に戻った。

 うん。

 たぶん私もちょっとブラコンかな。

 いつも優しいお兄ちゃんが大好きだ。

 

 「お兄ちゃん、どう?私の制服姿」


 「うん。可愛い」


 「そう!」


 そうして家はまた団らんに包まれる。

 そう──


 ──あの時が来るまでは。

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