第28話 牧場の少女リーゼット

「え? キャッ! あなた誰ですか?どうして裸なんですか!?」


 お前こそ誰だ!?

 何で勝手に他人の家のドアを開けて入って来てるんだよ。

 ふぅ、だがひとまず助かったな。

 エマさんだったらマジ終わってた。

 しかし、こいつは本当に誰だ?

 見た感じ小学生のような女の子だけど・・・


「ヒィィィ、ヴィンヴィンさんが死んでる・・・ひ、人殺しぃぃいいい!!」


 ありゃりゃ、パニックなっちまったな。

 ここで俺まで慌てたら状況が悪くなるだけだ。

 冷静に淡々と話しかけて落ち着かせないと。


「誤解ですよお嬢さん。彼女は僕の愛で気持ちよく失神しただけです」キラッ


「そんな汚れたものをたせたまま言われても信じられません!」

 おっと、全裸で両足を伸ばして座っていた俺はこの大ピンチでも萎えずに臨戦態勢のままだったようだ。

 ホントとんでもないな15歳男子の性欲って。


「これこそ僕たちが愛し合っていた証拠ですよ」


 ドアノブに手をかけ俺が近づきでもしたら直ぐに逃げ出す準備をしていた女の子は恐怖よりも思春期の好奇心が勝ったようだ。

 鎌首をもたげて透明なヨダレを垂らす俺のジュニアから目が離せない。

 よし、チンポの魔法が効いている内に話をつけてしまおう。


「僕の名前はイクゾー。この家に婿入りしました。君の名前は?」


「あ、お兄さんがお婿さんだったんですか! 私はリーゼットです」

 少し警戒心を解いた少女は素直に名乗ってくれた。

 リーゼットちゃんか。

 可愛い容姿にピッタリの名前だな。


「リーゼットちゃんはどうしてこの家に?」

 しかも当たり前の様にドアを開けて入ってきたよな。

 ヴィンヴィンの名前を知ってたから他人じゃなさそうだったが。


「ウルンネミ牧場からお肉と野菜を届けにきたんです」チラチラ


 へぇ、食材宅配サービスか。

 そういえば、エマさんたちが食料を買いに行ってる様子がなかったわ。

 こうやって昼間の間に届けてもらってたんだな。

 それも牧場からとか、文字通り産地直送だ。


「そうだったんだ。それはご苦労さまだね。いつもありがとう」ニッコリ


「いえ、仕事ですから・・・じゃあ冷蔵庫に入れますね」

 そう言ってリーゼットちゃんは木箱を抱えてキッチンへ入り大きな冷蔵庫の中へ食材を収めていく。

 その間にも俺のジュニアや純白に汚れて倒れているヴィンヴィンをチラ見していた。


「あの・・・本当に大丈夫なんですか?」

 ヴィンヴィンを見ながら心配そうに問いかけてきた。


「平気だよ。気持ち良すぎて意識を失っただけだから」


「えっ嘘、そんなの都市伝説ですよね? お嫁にいった友達もそう嘆いてましたよ」

 まぁ地球でも都市伝説レベルかもな。童貞だから知らんけど。

 あっ、俺もう童貞じゃないじゃん!

 なんてこった・・・これからはもう童貞を盾にできないのか。心細いものだな。

 しかし、友達が嫁に行くとかこの子もしかして成人なのか?


「リーゼットちゃんは何歳なの?」


「私は12歳ですよ。レイラちゃんと一緒です」

 12歳の新成人だったかぁ。

 身長は150cmぐらいで髪は三つ編み、顔にはそばかすがあるから幼く見えるけど、この世界では12歳で成人だから大人ってことになるのかこれで。

 普段レイラちゃんを見てるから余計に子供っぽく見えてしまうわ。


「レイラちゃんと同い年なんてちょっと驚いたよ」


「えー、レイラちゃんが大き過ぎるんですよ。比べないでください」

 そう言いながら空になった木箱を持って外へ出て行ったと思ったらまた別の木箱を抱えて入ってきた。

 冷蔵庫へ収納作業を再開しながらリーゼットちゃんが話しかけてくる。


「イクゾーさんはヴィンヴィンさんと結婚するんですね」


 あっ、この状況を見たらそう思っちゃうよな。

 ちゃんと口留めしておかないと不味いわ。

 それにヴィンヴィンもこのままにしておけない。


「リーゼットちゃん、お願いがあるんだけど・・・」


 彼女は俺の頼みを快くOKしてくれて大浴場でヴィンヴィンを綺麗にしてくれているところだ。

 俺はタオルで身体を拭き新しい私服に着替えてリビングで待っていた。

 しばらくするとリーゼットちゃんだけ戻ってきた。


「ヴィンヴィンさん目を覚ましました」

 あとは自分で洗うからと先に出されてきたとのこと。

「分かった。本当にありがとうね」

「あ、気にしないでください。私も勉強になりましたから」

 茶目っ気たっぷりにそう言ってジト目で俺を見るリーゼットちゃん。

 一見地味な女の子だけど割と天真爛漫な性格みたいだ。


「フン、時と場所を考えなさいよね」


 おっと、青肌の女王様がご帰還なされた。

 文句を言ってるみたいですけど、その言葉だと時と場所を選べばエッチOKってことですよね。ムフ

 バスローブ姿のヴィンヴィンは部屋に戻って着替えてくると二人掛けのソファーに座った。


「あの、ヴィンヴィンさん、結婚おめでとうございます」


 ちょ、それ言っちゃダメなやつ!

 しまったぁ・・・俺たちの微妙な関係を察するなんてこんな女の子にできるわけないのに・・・


「別にまだ決まったわけじゃないわ」


「え、だってあんなに一杯・・・」ポッ

 

「そのいろいろ事情があって複雑なんだ。だから今日見たことは誰にも言わないでくれるかな?」


「うわぁヒドーイ。やり逃げするんですかぁ?」

 やり逃げ!

 無垢な女の子がそんなこと言っちゃいけません!

 俺のジュニアが反応しちゃうでしょーが。

 それに俺はちゃんと責任を取るつもりだから。


「違うよ。今は説明できないけどちゃんとするから少しの間だけ黙っていて欲しいんだ。お願いだよ」


「うーん、ヴィンヴィンさんがそれで良いのなら私がどうこう言うことじゃないですけど・・・」

 まだ納得できてないリーゼットちゃんはツンドラ美少女の表情を窺っている。


「部外者は口を出さいでくれるかしら」ギラッ

 

「ひゃ、はーい、分かりましたぁ」

 青肌の女王様に軽く睨まれただけで納得させられたか。

 それでも直ぐに平常運転に戻ったリーゼットちゃんは疑問を口にする。


「ヴィンヴィンさん、髪の質が少し変わりました?」

 そうそう、それは俺もさっき思ったわ。

 パステルブルーの髪に光沢が増したというか色自体が薄くなってないか?


「魔力が溜まってるだけよ。最近、ギルドの移籍や引っ越しでクエストをやってないの。炎玉ファイアボールを二三発撃てば元に戻るだけのことだわ」

 くだらない事を言うと消し炭にするわよ的に俺が睨まれた。


「そーだったんですか。でも今度、うちの牧場の依頼をレイラちゃんとやってくれるんですよね?」

「それならローラと二人で今日やってるんじゃないかしら」


 今日のクエストってこの子の牧場が依頼主だったのか!


 なんだよ、大事なお客様じゃないか。失礼のない様にしないと。

 と言っても既に遅しかー。

 あれだけの醜態を見せたんだからしゃーない。

 ここから何とか仲良くなっていくしかないわ。


「ヴィンヴィンさんがいなくて大丈夫かなぁ」


「ローラがいれば心配ないわ。それに私が一緒だとレイラの昇格ポイントに響いてしまうからいない方が良いのよ」

 冒険者ランクの仕組みは知らんがそういうものらしい。


「ところでリーゼットちゃん、それってどんな依頼なの?」


「うちの家畜や農作物を狙う魔獣をやっつけてもらうんです」

 へぇ、いかにも異世界なベタな依頼だわ。

 だがそれだけにドキワクするな。

 できれば俺も付いて行きたかった。


「どんな魔獣が出るの?」


「オークにゴブリン、それに何といってもバジリスクですね」

 バジリスクって名前は聞いたことあるがどんなモンスターだったっけ。

「バジリスクってそんなに危険なのかい?」


「はい、オークとゴブリンは水路で囲った家畜小屋に入ってこれないんですけど、バジリスクは蛇ですから平気で侵入してくるんです」


 なるほど。蛇だったか。それなら泳いで渡って来ちゃうよな。

 

 そのあと15分ほど牧場の話を聞いたところでリーゼットちゃんは帰っていった。

 最後にはリーゼちゃん、お兄さんと呼び合うぐらい仲良くなったが、世話になったのにお茶の一つも出せず仕舞いだ。いつか埋め合わせしないと。


「さっき言ってた、ちゃんとする、というのはどういうことかしら?」


 ドキドッキン!

 これまでお互い有耶無耶うやむやにしていた核心を突いてきた!


 エマさんを嫁にすると公言していた俺と掟破りの一線越えをしたんだから、真っ先にこの件を話し合うべきなのに俺たちは避けてきた。

 答えを出すことを先延ばしにして快楽を貪ってきたんだ。


 でも、リーゼちゃんの一言で束の間のモラトリアムは崩壊した。


 どうする、ここで6人全員嫁にする計画を話すべきか?

 いや、不在の二人と会ってからじゃないと机上の空論でしかない。

 そんな話をヴィンヴィンにはしたくない。

 それにこの計画はまずエマさんに話したい。ヴィンヴィンには悪いけど。


「・・・今はまだ言えない。でも信じて待っていて欲しい」


「そう。信じはしないけど、どっちみち待つしかないわね」

 ヴィンヴィンは俺を追及しようとはしなかった。

「また襲われたら叶わないから私は部屋に戻るわ」

 


 夕方にエマさんが帰宅し、その30分後にはレイラちゃんとローラも無事に帰ってきた。

 俺は無傷で凱旋したレイラちゃんを喜び称え、無傷で返してくれたローラに感謝した。

 レイラちゃんは夕食まで俺の文字勉強会をしようと言ってくれたけど、さすがに休んで欲しかったので丁重に断った。



「えっ、もうバジリスクを討伐しちゃったの?」

 夕食の席で何でもない様にアッサリ言われたので思わず問い返した。

「うん、簡単だったよ!」

 いやでも、リーゼちゃんはかなりの大蛇で猛毒まで持ってるって言ってたぞ。

 そんな強敵をどうやって倒したんだ?


「倒したオークをバジリスクの前に置くのデス」

「は?」

 そんなことしてどうなるっていうんだ。

「そしたらバジリスクがオークを丸呑みして動けなくなるんだよ!」

 なるほど。強敵だけど馬鹿であったか。


「そこを心臓一突きで楽勝!」

 レイラちゃんはとても楽しそうで嬉しそうだ。

 そんな風に身体を動かして敵を倒すのが天職なんだろうな。


「楽勝なんてことありませんよ。動きの鈍くなったバジリスクでもそんなに簡単に急所を突かせてくれませんわ」

「そうだね。レイラちゃんが凄かったんだよ」

「ンーフーフー」

 レイラちゃん照れながらご機嫌で食事を続けている。よかよか。


「冒険者ランクは上がったの?」

「うん、四等になったよ!」

 二階級特進!

 どういう仕組みか知らんがとにかくよかった。

「それは、おめでとうだね。これなら直ぐに三等になれるんじゃない?」

「ンーフーフー」


「四等と三等の間には大きな壁があるわ」

 おおっ、珍しくヴィンヴィンが会話に参加してきたぞ。

「大きな壁ですか?」


「三等以上は冒険者の仕事だけで生活できる、言わば専業冒険者よ」


 専業冒険者!


 つまり四等以下は兼業冒険者ってことか。何やら悲哀を感じてしまうな。


「故に冒険者で身を立てていけるかどうか審査されるわ」

「というと?」

「C難度以上の依頼を連続で6回成功させないといけないわ」

 なるほど。要するに継続性が試されるわけだ。


「一度だけならまぐれ当たりかもしれない。でも六度続くなら実力よね」

「確かに。でもレイラちゃんなら大丈夫でしょう?」

「そんな風に油断しなければね」

 あらら手厳しい。ま、ヴィンヴィンはこうでないとな。


「私が付いていれば6回だろうと12回だろうと余裕なのデス」

 ふむ、下半身デブだけど一応エルフだもんな。

 ここはレイラちゃんの無事と俺の野望の為によいしょしておこう。

「その通りですよ。ローラさんなら失敗など有り得ないでしょう」

「フフフ、やっとお婿様にも私の実力が見えてきたようですネ」

 よしよし、機嫌がよくなったところで訊いておくか。 


「ところで、トノサマインコは見つかりましたか?」

 ふふふ、この流れでまさか失敗したとは言えまい。

「あ、すっかり忘れていたのデス」

 おいーーーっ!

「うそうそ、ちゃんと見つけてきたよー」

 マジで!

「でもあそこに巣を作られたら捕まえられないと思う」

 あそこじゃ分からないよレイラちゃん。


「まさか不帰ふきの森があったのですか?」


「はい、北の森のずっと奥に何か所かあって手が出せまでんした」

 うん、話についていけない。横槍を入れさせてもらおう。

「その、不帰ふきの森というのは何ですか?」


「文字通り、踏み込んでしまうと生きて帰れない昇天必至の森ですわ」


「どうして死んでしまうのでしょう?」

 

「体中の魔力を一滴残らず吸われてしまうのです」

 何ィィィイイイイイこれは面白くなってきたぞー!


「何が原因なのでしょうか?」

 俺は胸のワックワクを抑えながら話を続けた。

「それが分かりませんの。土壌、空気、生物、植物、様々な要因が考えられますが、何しろ人間は踏み込めませんので解明には至らず謎のままですわ」

 まぁそれは仕方ないか。

 しかし、ちょっと気になることがある。


「もしかすると人間だけでなく、魔獣も入れないのでは?」


「その通りですわ。魔獣も死んでしまいますから近寄りもしません」


「だから、不帰ふきの森は野獣天国なんだよー」

「絶滅危惧種が生き残っていても不思議じゃないのデス」

「天敵の魔獣のいない不帰ふきの森は野獣にとっては楽園ですわ」

「ま、そんな場所でもなければ野獣なんてとっくに全滅してるでしょ」

 なるほど。この世界にはそんな野獣のパラダイスがあったのか。

 

 そして俺にとってもお宝天国パラダイスって訳だ!


 なにせ俺には最初から魔力が無い。

 だからいくら吸われたって平気だぜ。


 つまり、不帰ふきの森は俺だけが入れる楽園ってことだ!!


 お宝の野獣を狩り放題だな。

 しかも周りに危険な魔獣がいないんだから安心して狩れる。

 あ、もしかしたら希少な植物も手付かずで眠ってるんじゃね?

 だって人間は誰も入れないんだからそうなるだろ。

 うはー、メッチャ夢が広がルンル~ン。


 ただ、その事はまだエマさんたちには言えないな。

 俺に魔力が無いことがどれだけショッキングなことか分からない。

 下手したら皆にドン引きされて全てが終わるかもしれん。

 だがローラにだけは話すしかないか・・・

 不帰ふきの森まで案内してもらわないといけないからな。

 でもローラなら人間じゃないし肉で口留めが可能だから問題ないだろう。


 ふふふ、野望への扉が開いたら何かまた楽しくなってきたな。やったるでー。


 

 夕食後にリビングでエマさんと二人きりのお茶会。

 レイラちゃんとローラは夕食のお片付け、ヴィンヴィンは大浴場。

 しばしの間、邪魔者は誰もいない。

 すっかり恋人同士の俺たちは、話もそこそこに濃厚接触を始めた。

 特に俺はヴィンヴィンで女体を知ってしまったのでボディタッチもついつい攻め過ぎになってしまう。

 

 エマさんが俺の腕の中でビクンビクンと三回目の昇天を迎えた時、さすがにこれ以上は不味いと体を離した。しかし、貰うモノは貰っておかないとな。

「さぁエマさん、汚れたての下着を脱いで僕にください」

 エマさんはもう抵抗することなく言われた通りに下着を脱ぎ始める。

 前かがみになったエマさんの魔乳が目の前でバルンバルンするのが溜まらんち。

 

 脱ぎ立ての濃厚なアロマを楽しんでいるとレイラちゃんとローラがリビングにやって来て4人での歓談になった。

「不在の二人はまだ戻りませんか?」

「はい、ピーナは明日にでも帰宅すると思うのですが」

「そのピーナさんが、このパーティーのマネージャーですか?」

「いえ、ピーナは弓使いですわ。スカウトとしても有能ですの」

 スカウトってたしか斥候のことだったよな。


「マネージャーは、ティアっていうんだよ」

「へぇ、ティアさんか。今は近くの都市へ行ってるんだっけ?」

「そうだよ。前にいたベルディーンで挨拶回りするんだって」


「ベルディーンでよく指名依頼して頂いたお客様たちにウェラウニのギルドへ移籍することを伝えて回っているのですわ。中にはこちらのギルドでもまた依頼をして下さる方がいらっしゃるかもしれませんので」


 なるほど。つまり営業かけてる訳だ。

 俺には向こうのギルドから客を引き抜くみたいに映って少し気になるけど、この世界では普通のことなのかもな。


「ティアはどこかで遊んでるじゃないの?」


 ヴィンヴィンが大浴場からバスローブ姿で戻ってきた。

 いつもならそのまま自分の部屋へ向かうのに今日は俺の向かいのソファーに座った。

 昼間にノーパン誘惑からのエッチで汚してしまったソファーだ。ムフ


「ティアはサボってばかりで困った監督なのデス」

「気付いたらいなくなってることが多いよねー」

「きっと何か用事があったのですわ」

 ふーむ、ティアってのはヤンチャ系みたいだな。

 ハーレムエンドを目指す俺にとっては面倒な相手かもしれん。


 ふと、正面に座るヴィンヴィンさんと目が合うとニヤリとされた。

 そしてツンドラ美少女は丈の短いバスローブ姿で両足をゆっくり広げ始めた。

 ちょ、だからそれはヤバイんだってば!


「ヴィー、見えてしまいますわよ!」

「あら、別に見せるぐらい良いじゃない。私は別に触らせてる訳じゃないんだから」

 まさか、さっきのエマさんとの濃厚接触を覗いてたのか!?

「そ、それは・・・」

 エマさんもそう察したようで二の句が告げないでいる。

「それにエマだって穿いてないでしょ下着」

「くっ・・・」

 その下着が俺のポケットの中にあることまで知ってるなこれは。ゴクリ


「えー、エマさん下着どうしたんですか?」

「その・・・汚れてしまったので脱いだのですわ・・・」

「何をしたらそんなに汚れるのか教えて欲しいものね」

「はぁ、本当に人間は汚れているのデス」

「もうこの話は終わりですわ。お風呂に入ってまいります」

「あ、私も入るー」

 エマさんとレイラちゃんはドアの向こうへ消えて行った。


 「私も部屋に戻るわ。フフッ、視線だけで孕まされそうだもの」

 ヴィンヴィンもいなくなって今度はローラと二人きりなった。

 いつもなら遠慮したいシチュエーションだが、今は好都合だ。

 あの件を相談しておかないと。


「例の奴は見つかりましたか?」


「当然なのデス。家の裏の森で待機させてマス。でもまだ増やしマス」

「その奴というのがいれば滞納者の極悪人を一気に攻め落とせるのですね?」

「私の作戦に失敗などあり得ませんカラ」

 どうかなー。そっち方面は抜け穴だらけな気がするなー。

 ま、今日はもう遅いから明日にでもその奴というのを見せてもらおう。

「期待しています。それでは僕は部屋に戻りますね。おやすみなさい」

 

 

 深夜の0時になった。

 いつもならこの時間帯で急激な寒さに襲われるのだが、今夜はさほど寒さを感じない。

 朝と昼にもヴィンヴィンと濃厚接触し体液を吸収したのが効いてるようだ。

 正直、ちょっと残念だったりする。

 青肌魔導師のベッドへ潜り込む言い訳がなくなってしまった。

 でもまぁ今夜ぐらいは我慢しないとな。

 さすがに朝も昼も夜もやりまくりだとヴィンヴィンも呆れるだろう。

 せっかく良い雰囲気なのだからぶち壊しにはしたくない。

 という訳で俺は寝巻に着替えてベッドに入った。


 

「・・・ク・・・」「・・・イ・・・・・・ゾー」

 うん? 何か聞こえる。

「・・・イクゾー」

 誰かが呼んでる?

 頭を起こそうとしたら首に何か冷たいものを感じた。


 え? 何かが当たってるよなこれ・・・?

 眠い目を無理やり開けてみると誰かが俺の上にのしかかっていた。

 そして俺の首元にナイフを押し当てていた。


 ちょ、お前何者なにもんなんだ?

 なんで俺の部屋にいるんだ?

 一体何をしようっていうんだよ? 


 そう考えていたら、まるっきり同じことを俺は訊かれた。


「お前は何者だ? 何故この家に潜り込んだ? 何を企んでいる?」

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