スズの過去 いつかの君へ5

 朝日。

 白く照らされる病院を、スズは木陰からながめていた。


 スズは結局、差し出された少年の手を取れなかった。

 そのまま気を失ったキウイ少年を、スズは病院に送り届けた。

 後のことは、人間がどうにかするだろう。


 スズは横を見た。

 猫魈ワラエルが、神妙な面持ちで、病院を、その中にいるであろうキウイ少年を見つめていた。


「ワラエル、そろそろ行くとするにゃ」


「……っすね」


 二人は連れ立って、歩き出した。

 昨日の天気がウソのように、日差しはやわらかい。


 少年の手を、スズは取れなかった。

 取る資格などないと、スズは思った。

 そして、取れるようになりたいと、思った。


 スズは空を見上げた。


 いつか、あの少年が、マタタビの力に目覚めたら。

 そして自分が、敵対した相手と、隣にいるワラエルと、心から友達になれるようになったら。

 きっと、会いにゆこう。

 真っ先に寄り添って、かけがえのない存在になろう。

 そんな日が、いつか来ればいいと。


 スズは、そう願った。




なえみやねこねこ大騒動! 〜マタタビ人間ってどういうこと!?〜


これが、ほんとうの、はじまり。

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