第65話 騒げ、騒げ。猫も犬も人間も、みんな、みんな!3

 キウイはスズを伴って、人波の間を歩いた。

 様々な屋台が、色とにおいを振りまいていた。


「やー、発案したの俺だけど、ホント大ごとになっちゃったな」


「まあ、楽しいからいいにゃ。ダンスはやらなくていいにゃ?」


「飛び入りが多すぎてステージが埋まってるんだよね。とりあえず、ジャミーラとかががんばってるからいいかな。

 あ、つけみみ売ってるじゃん」


 ねこみみやいぬみみなどを模した飾り、キウイはひとつ買って、つけてみた。


「似合うかな?」


「……オマエ、何あざといことやってるにゃ」


「あ、あざとい? そうなのかな?」


「……かわいいにゃ」


 スズはキウイの手を取り、つないだ。

 キウイは笑い、手を引いて祭りを見て回った。

 二人の手首には、セピアからもらった、おそろいのブレスレットがあった。


 離れた場所で、カイジュはにっかと笑って見ていた。


「アオハルだのーキウイー。ワシちょっとうらやましいぞー」


「何を言っていますか」


 母がカイジュの隣に立った。


「こんな祭りの中で、隣にこうして妻がいます。甲斐性を見せたらどうですか」


「は? いやいや、おいこら腕をからませるな!? やめんか年甲斐もなく!」


「年甲斐もなく?」


 母はカイジュに顔を寄せ、下からにらみ上げた。


「この歳になるまで放置したのはどこの誰ですか。息子の顔を見ることさえせずに」


「いやそれはだな、ほらワシ神様だし、こういろいろと……」


 母は顔をそむけ、うつむいた。


「子が親の不在をさみしがるように。妻が夫の不在をさみしがらないとでも、お思いですか」


 カイジュは一瞬、その横顔に見とれた。

 祭りの電飾が、妻の横顔に、光と影を落としていた。


「……まったく。昔のワシにグッジョブと言いたいわい。こんなイイ女を捕まえてたなんてなあ」


「そう思うんなら、行動で示してくださいな」


 二人は手をつなぎ、祭りの輪の中へと歩き出した。

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