第34話 悲しき激突!イカ人間獣医!2

「ふんぬおおおお! あふん!」


「キウイー!?」


 触手をよけてスズたちのもとへ駆け寄ろうとしたが、普通に叩かれた。身体能力はただの高校生なのだ!


「まだまだ! 俺はあきらめないぞ!」


「えいっ!」


「ふぎゃん! まだまだー!」


「いい加減にしてください!」


「みきゃん! ……うおおおー!」


「何度も何度もー……無駄なんですよー!」


「ほぎゃー!」


 イカ触手があふれた。天井がはじき飛ばされ、月光がさした。触手はセピアの体を押し上げ、キウイを見下ろさせた。


「なんで、なんであきらめないんですか! 痛くないんですか!? つらくないんですか!?」


「痛いけどつらくなんてない! スズたちを助けるためだ! むしろセピアさん、あなたの方がつらそうに見えます!」


「黙れッ!!」


「いやーん!?」


 触手がベルトを切り、ズボンがずり落ちてキウイは転んだ。


「いいですよねあなた猫ちゃんから好かれる力を手に入れて!! 私なんてこんなんですよ!? 喜んでると思いますかこんな体になって!! 思うわけないじゃないですかイカ食べすぎたらこんな体になるなんて!!」


「うんそれは誰も思わないね!?」


 セピアは泣き笑いの顔でまくし立てた。


「あなた私に何かできますか!? 私にどうしろって言いますか!! 私は獣医なんです!! なんの冗談で猫ちゃんに触っただけで傷つけちゃう体質になるんですか!! あなたのその恵まれた力で何かできますか!? マタタビ人間のキウイさん!!」


 キウイはその顔を、見上げた。立ち上がり、もはや腰に留まらないズボンを投げ捨てた。


「別に望んだ力じゃないけど、俺が恵まれてる方だってのは理解しましたし、あなたのつらさも納得しました」


 挑むように、マタタビ人間キウイはイカ人間獣医セピアを見上げた。


「でも俺は、スズたちを傷つけるのは許さない。みんな、助けます」

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