第827話罪悪感と贖罪?
「んっ・・・?」
俺は初音に対しキスをすると、初音が気を緩ませた瞬間に体制を崩し、今度は俺が初音に跨る形となった。
それでも俺はキスを続けた・・・さっきまで怒っていた初音の表情が、だんだんと柔らかくなる。
「っはぁ・・・」
やがて呼吸がもたなくなると、初音から唇を離した。
「・・・そーくんにしては、頑張ったね」
「・・・脅しだなんて言って初音の愛情を貶めたことは悪かった、ただ俺も初音のことをちゃんと好きだって証明したくて」
っ・・・胸に、棘が刺さった感覚だ。
「そーくん、今日霧響ちゃんは?」
「・・・多分後20分もすれば帰ってくる」
ここは「今日は帰ってこない」なんて言うのがロマンチックな展開なんだろうが、そんなに手回しは上手ではない。
「20分ね〜、20分じゃ流石に本番まではできないかな〜、まぁでも・・・愛を育むには、十分すぎる時間だよね」
「・・・・・・」
初音がゆっくりと俺に手を伸ばしている。
・・・胸に棘が刺さったみたいに痛い。
・・・これは、罪悪感だ。
本当は結愛と浮気しているのに初音のことを好きだって証明したいだなんて、よくも俺はそんなことが言えたものだ。
「初音・・・」
「ん?」
・・・浮気していることを初音に伝える、そうすればきっと叱責や暴行を受けるかもしれないが、覚悟の上でもう吐き出してしまいたい。
・・・だが。
「・・・なんでもない」
それはただ俺が楽になりたいだけだ、覚悟なんて綺麗な言葉で表現するにはあまりにも汚すぎる。
「そーくん、言いたいことがあるなら言っていいよ?」
「いや・・・これは言ったらダメだ」
「どうして?」
「その理由を言ったら言ってはいけないことを言ってしまったことと同じになるから・・・言えない」
「・・・ふ〜ん、そう、今こんなに良い雰囲気だったのに、私に隠し事するってことでいいの?」
「・・・・・・」
「もし今言ってくれたらちょっとはその隠してること許してあげるよ?」
「別に許されたくない」
・・・結愛とは年末までなんて約束をしてしまったが、今はまだ9月、とてもじゃないが年末までなんてこのメンタル状態で保っていられる自信が無い。
「許されたく無いことしてるんだ」
「・・・・・・」
「・・・今は見逃してあげるね、でも」
「ん?」
「これで・・・」
初音は俺の両手足をこれ以上無いほどにきつく縛った。
「ちょっ・・・普通に縛りすぎて痛い」
「隠し事してるんだったら、ちょっと・・・ね」
初音は俺の衣服を全て奪うと、俺のことを恋人がするようなことの意味で地獄を味わわせてきた。
・・・地獄だが、浮気している贖罪としては、まだまだ足りないのかもしれない。
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