第828話別れ話

 俺は結愛のことを俺の部屋に呼び出した。


「結愛・・・」


「どうしたの〜?そーちゃん、なんでも言って!」


 先日の初音と似たようなものを感じさせることを言ってくる、これから話すことはそんなに明るい声で話せるようなことではない。


「その・・・本当に身勝手なことを言っているっていうのはわかってるだ、でも、浮気してるのに良心の呵責が耐えられなくなったっていうか」


「・・・そーちゃん、聞きたいんだけど、私と先に付き合ってたらあの虫とそーちゃんは付き合ってたかな?」


「結愛を振ってってことか?」


「うん」


「それは・・・分からない」


 ここで俺が何を言っても想像の話にしかならない。


「・・・私の見解だと、そーちゃんは多分私を振ってまではあの虫と恋人になってないと思うんだよね、今みたいに条件付きでの浮気ならするかもしれないけど」


「・・・・・・」


「要するに、私とあの虫はそーちゃんにとってほとんど大差が無いってことだと思うんだよね、でも少しは差がある・・・じゃあその差はどこで生まれてるんだろうね?」


「それが、さっき言ってた先に付き合ってたかどうかって話に繋がるのか?」


「それもあるけど、そーちゃんがあの虫を裏切れない決定的な・・・例えばそう、既成事実とかがあるんじゃない?」


「っ・・・」


 確かにそれも俺が罪悪感を覚えている理由の一つだ。

 ただでさえ浮気は良く無いのに、俺と初音はもう互いに深くない関係ではない、それなのに浮気をしてしまっているというのが俺に大きな精神的ダメージを与えている。


「まぁ、それがどんなことなのかは、簡単に想像が付くんだけどね」


 結愛は悔しそうな表情をしている。


「だからねそーちゃん、私とも既成事実作ろうよ」


「え・・・?」


「そうすれば私もあの虫と同じ土俵なわけだし、それでフェアになるよね」


「でも・・・そこまでいくと、本当に最低になる」


「そーちゃんはもう浮気しちゃってるんだよ?今更そんなことがまかり通ると思ってるの?そういうのは浮気する時に覚悟しておくことだよ?」


「っ・・・」


 俺にとっては非常に耳が痛くなる言葉だ。


「それにさ、あんな虫なんかよりも私の方が絶対にそーちゃんと性格とか考え方とか、他のことだって・・・相性良いよ!」


「そんなこと分からな───────」


「まだ何も分からないよ、だからこれから教えてあげる」


 結愛は珍しく強引に俺のことを押し倒すと、足だけを拘束した。

 だが・・・


「足だけ・・・?」


 腕が動くのであればいくらでも抵抗のしようがある。


「・・・ふふっ」

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