第825話初音に逆らう
小姫さんは俺の今後の課題となりそうなことを言った。
「ずっとあの子の言いなりになってこれからの人生を過ごしていくつもり?」
「いや・・・」
その言い方をされると否定したくなる。
「でも・・・逆らったら何をされるかわからないし」
「例えばどんなこと?」
「・・・刺されたりとか足切られたりとか、下手すると殺されるかもしれない」
普通ならここは「そんなわけないだろ〜」と笑い待ちのところだが残念なことにこちらは一切ふざけてなどいない。
「今までそんなことあったの?」
「・・・軽く刺されたり切られたことは」
「どれも軽くでしょ?実際に今後の人生に支障出るほどのことは君のことだから今まで色々やらかしてきてると思うけどそれでも大丈夫なんでしょ?」
「・・・まぁ」
確かに大きな怪我と言えば骨折くらいなものだが、あれは林間学校で初音と結愛が鬼ごっこで熱くなりすぎた結果みたいなもので、俺が何か逆らったりしたからというわけではなかった。
「だったら君馬鹿じゃない?本当に好きな人が反対意見だしただけで殺したり足切断したりすると思う?」
「普通はしないと思いますけど、初音は普通じゃないっていうか・・・」
「普通だって、私から見れば」
・・・小姫さんも中々面白いことを言う。
申し訳ないが初音が普通か普通でないか論争は俺の頭の中で数百回と行われている、譲る気はない。
「好きな人に脅しをかけるのって普通ですか?」
「離れてほしくないんじゃないかな?」
「好きだからって監禁したりするのって普通ですか?」
「監禁って言ってもご飯はもらってたんでしょ?ちょっとヒステリック起こしちゃっただけの同棲と思えば良くない?」
「・・・好きだからって襲うのって普通ですか?性的な意味で」
「まぁ好きだからこそ襲うって考えるべきだよ、好きだからこそ愛が抑えられなくてってね」
「・・・・・・」
「もう終わり?」
普段なら他にも色々と思いつくが、今はいきなりだったためこれくらいしか思いつかなかったな・・・これくらいと言ってもかなりハードなつもりだったが、それでも小姫さんには通用しなかった。
「やっぱり君が思ってるより全然普通なんだって、だから一回逆らってみなよ」
「逆らうって・・・具体的にはどうやって?」
「そんぐらい自分で考えたら?キモ・・・って言いたいところだけど私の明晰な頭脳を貸してあげる、例えば普通に「初音に縛れる必要なんてない!」って直接言ってみるとか、あとはそれこそバイトを続けるとかね」
「そんなことしたら───────」
「殺されるって?君今までで一回でも殺されたことあるの?」
「・・・無い」
「殺すって良い脅し文句だよね〜包丁持ってるだけで真実味増すもんね〜」
・・・確かに、初音は今まで俺が浮気したら殺すとか言っていたがそれに類する行動をしても命が取られることはなかった。
・・・小姫さんの言うとおりかもしれない。
放課後、俺は初音を家に呼んで、いい加減逆らってみることにした。
・・・この逆らいが成功したら、また小姫さんとバイトをしよう。
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