第789話嘘
「そーくん、早く」
「ダメですよお兄様!」
霧響は俺のことを掴んで離さない。
「はぁ・・・霧響ちゃん、本当なら霧響ちゃんの目の前でそーくんと性行してあげても良いんだよ?でもそれは霧響ちゃんには刺激が強すぎるかと思って最低限の妥協ラインで譲ってあげてるんだよ?」
「今私が居なくても、お兄様が私以外の方とそのようなことをされるなんて絶対に嫌です!やめてください!」
「はぁ、そーくんも兄想いな妹を持って幸せ者だね、想いすぎだけど」
それに関しては本当に同意しかない。
想ってくれるのは兄冥利に尽きるのかもしれないが想いすぎなところだけが本当に難点だ、想うの意味も何か違うしな。
「お兄様、なぜこのような方を好きになってしまったんですか・・・どう考えてもお兄様が最初からこのような方を好きになるはずがありません、見た目で決めたのですか・・・?」
「そんなわけないだろ!」
「ではなぜ白雪さんを恋人にしたんですか?」
「それは・・・」
本当の最初に初音と恋人になったのは刃物で初音に脅されていて仕方なくだったが、今ここでそれを言っても絶対に逆効果にしかならないだろう。
「私が普通に告白して、そーくんが私の気持ちを受け止めてくれただけだよ、それ以上でも以下でも無く、そうだよね?そーくん」
「・・・あぁ」
俺はここで否定する方が後に厄介な種を撒くだろうことを予想し、初音に合わせておくことにする。
時に我慢も必要だ。
「嘘です!今のお兄様の挙動は嘘をついている時の挙動です!」
なんでこんな簡単に嘘がバレてしまうんだ、そんなに顔に出てはないと思うんだが・・・今度鏡を見ながら嘘をついてみて自分の顔を確認してみようか。
「嘘なんてついてない」
「それが嘘です!白雪さんにはこのお兄様の嘘がわからないんですか?わからないのであれば白雪さんのお兄様に対する理解度なんてその程度です!」
「わかってるよ、だからそーくんに聞きたいけど、なんで嘘ついたみたいな雰囲気出して本当のこと言ってるの?」
なんでそこで初音までもがいきなり梯子を外してくるんだ。
「嘘ついたみたいな雰囲気なんて出してない!」
そんなもの意図的に出してたまるか・・・それをするときは俺が命を絶ちたくなった時ぐらいだろう。
「・・・じゃあ嘘ついたの?」
さっきまでは互いに矛先を向けていたはずがいつの間にか両方の矛先が俺に向いている。
このままでは───────
「てってれ〜!」
「・・・え?」
ドアが開いたかと思うと、この空間には似つかわしくないほど明るい声が聞こえてきた。
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