第735話あゆの手解き

「ぐっ、あぁぁ待ってくれぇぇぇ」


「そう言いながら私のことを暖簾のれんにする手の力はものすごく弱いじゃ無いですか〜」


「うっ・・・」


 それはこんなことをされたら自然と力も抜けてしまう・・・


「大体先輩からしたいって言ったんですよ〜?わかってますかぁ?」


「いや、あれは、その・・・」


 嘘をついて逃げ出すつもりだったとは言えない。


「はいはいわかってますよ〜照れてるんですよね〜♪・・・あっ、そろそろかな〜?」


 あゆのが示すものはまさに俺の我慢の限界のことであった。

 くっ、なんでこんなにも正確にバレてしまうんだ・・・


「ほんっと先輩はここもわかりやすくて助かります〜」


 俺は今出せる限りの力であゆのことを離そうとする。


「そんな力じゃ私のこと触ってるぐらいにしかなりませんよ〜?あっ、ちょうど今一糸纏わない姿の私の胸揉んじゃってますね!もしかしてそれが狙いですか!?」


「ち、違う!」


 もう胸がどうのなんて感覚すらない。

 とにかく一刻も早くあゆを遠ざけない・・・と。


「可愛いぃ、はぁ本当に夢の中にいるみたいです〜、とうとうこの時が・・・あっ、びくってした!これは──────」


 何がとは言わないが、とうとう俺の我慢が爆発してしまった。


「ぁっ」


「来た〜!溢れてる〜!」


 最悪だ・・・この相手が今彼女である結愛だったなら千歩譲ってここまでの罪悪感と嫌悪感はなかったんだろうが、彼女でもなんでもない後輩とこんなことをしているのは普通に最低すぎる。

 一応上に乗られていて動けないとは言え錠とかで拘束されていないからかさらに罪悪感が募ってしまう。


「うわぁ〜!すご〜い!でも私は白雪先輩たちと違って今すぐに先輩の子を身篭ろうとなんて考えてないので安心してくださいね〜♪」


 そんなことで安心できるわけがない・・・っていうか安心してはいけないゾーンをたった今突破してしまった!


「ささっ!じゃあもう一回スッキリしたところで、今度は私のこともスッキリさせてくださいね!」


 そういうとあゆは俺のその溢れてしまったそれを何かで拭くこともせずに純粋な声音で言う。


「大きくな〜れ!大きくな〜れ!」


 本当にこんな状況でさえなければ純粋に聞こえたんだろうがロケーションが最悪すぎる。

 くっ・・・もう万事休すなのか。


「・・・あれ?」


 あゆは突然震えるような声を上げた。

 ・・・ん?


「え、せ、先輩?」


「な、なんだよ・・・?」


「・・・なんか、大きくならないんですけど」


「・・・え」


 俺たちの間には、何とも言えない空気感が漂った。

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