第731話頭の冴える総明
まずい・・・多分今回のあゆは本気だ、今までのおふざけとかじゃない。
前にもあったけどあゆは本気を出した時と普段の落差が激しいから余計にそこの差に恐怖を感じてしまう。
「まぁ時間はいっぱいありますから、たくさん考えてくださ〜い♪」
そして、あの言い方だと多分1日だけ同棲というルールも平気で破るつもりなんだろう、もちろんそのために初音たちに妨害されないことも考えていると思われる。
・・・となるとやはり俺はあゆに出された選択肢のどちらかをやるしかないのあ。
「・・・いや」
今まで俺は色々な困難を自分の力で・・・では無いがそれでも何かと脱してきたはずだ。
だからきっと今回も何かしら抜け道があるはずだ。
「・・・あれは」
俺は机の上に置いてある手のひらサイズのハンカチのようなものを手に取った。
なんだこれ・・・?
「あ、それ手触り良いですよね〜?それも一応一人えっち用のやつなんですよ〜、それで先輩のを包むようにして──────」
「悪かった!説明はしないでくれ!」
全く・・・本当にふざけているとしか思えない状況だがあゆはふざけてないって言うんだもんな。
・・・ん?ちょっと待てよ?
「・・・・・・」
俺は監視カメラの方を向く。
「えっ?なんですかっ?カメラ目線!」
あゆはこの部屋にいるわけじゃない、つまり俺が仮に一人で・・・それをすると言ったらどうやってそれを確認するのか。
決まっている、あの明らかに目立っている監視カメラで確認するんだ。
音はどうやって拾ってるのはか知らないが、とにか目はあの監視カメラってことだ。
・・・なら。
俺はその監視カメラの真下までくる。
「え〜?何するつもりですか〜?」
「・・・恥ずかしいからな」
俺はそう言うとジャンプしてなんとか手に持った布のような手のひらサイズのハンカチのようなものを監視カメラに被せた。
「あ〜!」
「俺はその・・・一人ですることを選択する、だが見られるのは恥ずかしいからこうさせてもらう」
よし・・・ここからは俺の演技力だ。
いかに本当に俺がそう言うことをしているかと言うのをあゆに音だけで思わせることができるかが重要になってくる。
「・・・あ」
そうだ、閃いた。
腹筋だ、腹筋を声を出しながらすれば結構それに近い声が出せるような気がする。
しかも実際に腹筋をしているから演技という感じもしない、今日は冴えてるぞ、俺・・・!
そう思い至った俺はすぐに腹筋を始めることにした。
「ふっ・・・はっ」
「え、先輩?何してるんですかぁ?」
「何って・・・言われた通り、してるんだろ」
よしよし、良い感じに演技ができている。
この調子で・・・
「っ・・・ぐっ」
というか普通に演技とかでなく腹筋は厳しいものがあるから自然と声が出てしまうな。
「え〜、せんぱ〜い、腹筋してなんて言ってないですよ〜?」
「・・・え?」
「もしかしてカメラが一つだけだと思っちゃったんですかぁ?可愛いですね〜♪この部屋は隠しカメラが30個近くあるんですよ♪」
「・・・・・・」
その言葉に俺はしばらく絶望しか抱くことができなかった。
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