第696話ハッピーエンドにはならない

「は、初音・・・?」


「・・・破れて無いよ?」


「・・・え?」


 初音は破れてないと言うが、俺の目にはしっかりと避妊具が破れているのが写っている。


「そ、そんなはずないだろ?ほら、ここ」


 俺は指を指して初音に確認する。


「・・・あ、それ?それ・・・元々だよ?」


「え、も、元々・・・?」


 避妊道具が元々破れてるなんて・・・そんなことあり得るのか?


「それって、これが不良品ってことか・・・?」


「ううん、不良品じゃなくて、その避妊具は元々そういうコンセプトで作られた避妊具なの」


「元々破れてたら避妊の役割を果たして無くないか・・・?」


「果たしてるよ?そこが破れてるのは、そーくんのそれを守ためななの、行為中は空気圧が激しくなるから、だからその空気を逆流させないために破れてるの」


「え、で、でも、これでどうやって避妊の役割なんて担って──────」


「もうっ!そんな面倒なことは後でいいからっ!早くしようよっ!」


「言い訳ないだろ!?一歩間違えれば子供ができるんだぞ!?」


 だめだ、何か嫌な予感がする。

 俺は避妊具について詳しく知ってるわけじゃないけど、少なくとも前初音に見せられた避妊具は破れてなんてなかった。


「あ〜!こうなったら力ずくで・・・!」


「ちょっ・・・!」


 初音はとうとう痺れを切らしたのか、力ずくという一番やってはいけない行動に出た。

 まぁ今までも似たような手を食らってはきてるけど流石にこんなむしゃくしゃな感じでやられるわけにはいかない。


「は、初音!今日した約束はどうなったんだ?女の子が産まれる可能性─────」


「そんなの知らない!もう男の子が産まれることに賭ける!」


「賭けで子供を産むなっ!」


「だって・・・!やっぱり何度考え直してもそーくんが私以外の女に触れて私以外の女の裸見るなんて我慢できないよ!できるわけないでしょ!?」


「ダメだ!今日約束した通り、女の子でも初音が許容してくれるっていう考えになってくれないなら、俺は子供なんて作らない!行為をしたいなら、ちゃんとした避妊具を用意してからだ!!」


 俺が男として強く言うと、初音は普段の俺との違いにびっくりしたのか、少し沈黙し・・・


「わかった、じゃあ今日はシないであげる」


「あ、ありが──────」


「でも、そのお詫びとして・・・」


 と、初音は俺のそれから避妊具を取ったかと思えばそれを投げ捨て・・・


「い〜っぱい気持ち良くしてあげるね?」


「えっ・・・」


 初音のその目は、仕返しとでも言いたげな目だった。

 あぁ、子供を作ることは回避し、地獄を見る羽目になってしまうとは・・・なんで神様はいつも俺にハッピーエンドを用意してくれていないんだ!!

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