第649話結ばれる運命

「今更何言ってるの?」


「・・・え、い、今更って・・・?」


「私は前にそのことに気づいて、そーちゃんに正攻法で色々と愛を表現したけど」


 正攻法・・・?・・・どこがだ?

 ・・・いや、初音と比べればってことか・・・?


「そーちゃんはその全てを拒んできたよね?っていうことは癪だけどあの虫と似たような方法でしないとそーちゃんはもう愛を感じることができない体になっちゃったんだよね?あの虫のせいで・・・可哀想」


 しっかり結愛の本音をぶつけられつつ、可哀想と哀れまれてしまう。


「ま、待ってくれ、愛を感じるどうのというか・・・と、とにかく、俺は浮気なんてしない!」


「そうだね、そーちゃんは浮気はしないよ」


 ・・・え?


「う、浮気しないってわかってるなら何がしたいんだ?」


「そーちゃんは浮気じゃなくて、私1人だけを愛するの」


「・・・え、それって」


「そう、そーちゃんは、あの虫とはきっぱり縁を切って、私と恋人になるの」


「な、何言ってるんだよ、それこそ浮気よりあり得ないだろ!」


 浮気するぐらいなら別れたほうがマシだという考え方もあるかもしれないけど、俺の場合初音に別れるなんて言ったら多分殺される、こっちは命懸けなんだ。

 そんな世論なんて当てにできない。


「ううん、私とそーちゃんは結ばれる運命なの」


「む、結ばれる運命って・・・」


「で、そーちゃんに私を受け入れさせるための方法は一つだけ・・・あの虫よりもそーちゃんと早くに至る事なの」


「えっ、あ・・・」


 事って・・・そういうことだよな。

 ・・・というより、俺ってどうなんだ?

 一応初音と事・・・をしようと思ったけど俺に性耐性が無さすぎて一瞬だっだし・・・どうなんだ?

 俺と初音はもうすでに肉体関係──────


「・・・え?そーちゃん?」


「・・・えっ?」


「え、そ、そーちゃん?も、もしかして、もうあんな虫と・・・事後なの?」


「・・・・・・」


 ま、待て、落ち着け。

 これは証拠があっての問い詰めじゃなく、あくまでも確認だ。

 いくらでも嘘をつける、本当のことを言う理由もない。

 ・・・よし。


「そ、そんなわけないだろ?い、いやいや!そ、そんなわけないって!」


「・・・う、嘘だよね・・・?そー・・・ちゃん・・・?」


「え、え?だ、だからそんなわけないって言ってるだろ?」


「・・・いつ」


「・・・え?」


「・・・いつシたの?」


「ちょっ、さ、さっきから人の話聞いてるか?俺はそんな事してないって言って───────」


「そう」


 結愛は端的にそう告げると、顔を伏せながら洗面所を後にした。


「・・・・・・」


 だが、俺は顔を伏せていた結愛の表情が一瞬見えてしまい、その場を動けないでいた。

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