第628話お母様と謁見

「はいはい初音ちゃん、遠慮なんてしないで上がって!」


「えっ、あっ、はいっ・・・お、お邪魔します・・・」


 俺は初音に対して「誰なんだ」と言おうとしたのをグッと堪え、初音に続くようにして家に上がる。

 ・・・ゴールデンウィークぶりだな。

 そう言えば、俺と初音がゴールデンウィークにここに来たのは、初音が俺の親に会いたいって言ったからだったな。

 ゴールデンウィークから現在越しにとうとうそれが叶い、とうとう初音の言う初音と母さんとの謁見が始まった。


「で!何かお話でもあるの〜?」


 母さんは目を輝かせて言う。

 俺の母さんは基本的には元気の良い人で、昔結愛が「そーちゃんのお母さんみたいになるっ!」なんて言ってたぐらいだから、優しさ的な面では結愛にちょっと似ているところがあるかもしれない。


「はっ、はは、はいっ!そ、そうなんです・・・!お、お話があって・・・あ、こ、これ、つ、つまらないものなんですけど良かったら・・・」


 そう言って初音はこれまた高そうなお菓子を目の前のテーブルに仰々しく置いた。

 ・・・本当に行儀が良いな、もし良かったら本当にその行儀良さをほんのちょっとで良いから俺に分けて欲しい。


「わぁ〜ありがとう〜」


 母さんがそれを受け取ってからお手本のように間を空け・・・初音は重そうな口を開いた。


「え、えっと、そ、その・・・そ、そーくん────じゃなくて、総明くんとの将来についてちょっとお話があって・・・」


 初音はいつにない緊張したような態度で言う。


「うんうん!」


 母さんは初音が何を言うかもうすでにわかっているかのように元気よく頷いた。


「そ、総明くんが18歳になったら・・・その、わ、私と、け、結婚させていただけないでしょうか・・・!」


 さっきまで小さかった声だが、初音は最後のところだけ力強く言った。


「うん、いいよ!」


 ・・・えっ!?そ、そんなあっさり・・・!?


「ちょっと待──────」


「─────でも、ちょっとだけ質問してもいいかな?」


「ぜ、全然大丈夫です・・・!」


 初音はちょっと嬉しそうな顔をしているが、それでもまだ緊張の糸は解けていない。

 ・・・って、ちょ、ちょっと待て、まさかこんな簡単に結婚するかしないかの話になるなんて想定外すぎる!


「初音ちゃん?は、明くんのことどのぐらい好きなの?」


「今あるどの人類語でも表現できないぐらい大好きです!!」


「うんうん、じゃあもう子供は作ったの?」


「・・・は!?な、何を聞いて────────」


「明くん?ちょっと静かにね?」


「あっ、は、はい・・・」


 ・・・本当になんでいつも俺が関わってるはずなのに俺が蚊帳の外にされてるんだ?

 俺がそう答え、口を閉じるのと入れ替わるように、初音はすぐに口を開いた。


「子供は────────」

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