第565話結愛の想い

 その後は俺が説得と言うよりは、逆に霧響が俺に離さないように説得してくるという立場逆転にも程があるような感じになって、もうそろそろ夜で夜ご飯を作らなければいけないということで時間が解決してくれた。

 どんなことでも基本的には時間が解決してくれるというのは本当らしい。


「はぁ・・・」


 それにしてもまさかあの発言だけで本当に自分の体の一部を削ぎ落とそうとするとは・・・

 本当に俺と同じ環境で育ってきたのかと疑いたくなるな・・・


「そーちゃん」


「・・・ん?」


 初音に自分の部屋の中に居るよう言われていた俺はベッドの上でさっきまでの疲れを癒すようにして寝転がっている・・・俺のところに料理中だと思われていた結愛が入ってきた。

 俺は寝たまま話すわけにはいかないと思い、慌てて上体を起こした。


「ご飯を作ってたんじゃないのか?」


「それは霧響ちゃんとあの虫に譲ってあげたの」


「そ、そうなのか・・・?」


 よくわからないけどじゃあなんで俺のところに来たんだ・・・?


「ねぇそーちゃん」


「なんだ・・・?」


「さっきお胸の大きさなんて関係無いって言ってたよね?」


「え、え?ま、まぁ・・・」


「そーちゃんのことならどんなことでも許容してあげたいけど、それだけは許容できないよ?」


 え、な、なんでだ・・・?

 むしろ女性側からしたら胸の大きさなんて気にされる方が嫌だと思うんだけど・・・


「な、なんでだ?」


「だって、それって私のお胸が大きくてもどうでもいいってことでしょ?」


「え、いや─────」


「女の子の魅力の一つをどうでもいいって言ったってことだよね?」


「・・・ど、どうでも良いっていうか・・・そこをあんまり重要視してないってだけだ」


 これで結愛も納得してくれるだろう。


「・・・じゃあそーちゃんは私のお胸のことどう思ってるの?」


「・・・え、だ、だから胸なんて別に気にして無いって言ってるだろ?」


「気にして無いなら私が今ここで上の服だけ脱いじゃっても問題無いよね?」


「それは問題あるだろ!」


「なんで?そーちゃんはお胸のことなんて気にしないんでしょ?」


「いっ、いや、それは・・・」


「そーちゃん、もうちょっと自分の欲望に素直になっても良いと思うよ?」


 そう言いながら結愛はゆっくりと俺に近づいてきた。


「素直に・・・?」


「うん、まずね?そーちゃんは本当にあんな虫とは別れるべきなの」


「そ、それが素直にとどういう関係があるんだ・・・?」


「そーちゃんは本当は私のことが好きなの」


「・・・え?」


「前から言ってるけど、長い目で見て?あんな虫なんかと付き合うより私と居た方が絶対にそーちゃんのためになるの」


「・・・・・・」


 それから俺は、結愛の話を半強制的に聞かされることになった。

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