第563話結愛の嫉妬

「・・・い、いや!す、すごい音だったからちょっと気になって・・・」


「・・・そーくん、なんか元気になってるね」


 ま、まさかさっきあゆに襲われかけてたことがズボンの上からでもバレたのか・・・!?


「げ、元気!?いやいや!別に何もしてないって!」


「・・・なんの話してるの?私は飲み物も食べ物もあげてないのにさっきよりも元気になってるねって言ったんだけど」


 あ、そう言うことか・・・ちょっとさっきのせいで頭が下な方に向いてるな・・・


「あー、そ、そんなことないと思うぞ・・・?」


「・・・もしかして、お水飲んだの?」


「・・・な、なんのこと─────」


「そーちゃん!そんな虫なんかとばっかり話してないで私ともお話しよっ!」


 そう言うと結愛は自分の胸を押し当てる形で俺の腕を組んできた。


「え、ちょ、ゆ、結愛・・・!?」


「ん〜❤︎虫なんかの相手するよりそーちゃんとこうして愛し合ってる方が何阿僧祇倍も良いね〜♪」


「・・・そーくん、何やられるがままでいるの?すぐ振り払って」


「そーちゃんが私といることを無意識かで選んでるんだから仕方ないよ、ね〜?そーちゃんっ!」


「・・・・・・」


 俺はこれ以上初音の機嫌を悪くするわけにはいかないと思い、慌てて結愛の腕を控えめに振り払った。


「あっ、そーちゃん・・・」


 結愛は物惜しそうに俺の名前を呼んだ。

 ・・・心が痛い、後で謝らないにしてもちょっとフォローぐらい入れておくべきか・・・?

 いや、でも彼女じゃない女子にそんなフォローを入れるっていうのもな・・・


「っ!そーくん!」


 今度は初音が俺の腕を組んできた。

 ・・・その光景を結愛は殺意を込めたような目で見ているが、俺はそれを知らないふりをして目を逸らす。

 で、でもこれでとりあえずは初音の機嫌も悪くはならな─────


「って、あのウイルスみたいに私が喜ぶと思った?何勝手に約束破って部屋から出てきてるの?そんなすぐに約束破っちゃうから浮気なんてしちゃうんじゃないの?」


「うっ・・・」


「うっ、じゃなくて私に謝って?」


「・・・はい、ごめんなさい」


 俺は謝らなかったら絶対に初音の機嫌が悪くなると思い、すぐに謝った・・・が。


「ちょっと!なんでそんな簡単にそーちゃんのこと謝らせてるの!?可哀想でしょ!?」


 と、ここでずっと黙って・・・と言うよりはずっと殺意のせいで言葉を出すことさえ忘れていたであろう結愛がようやく口を開いた。


「は?そーくんが悪いことしたんだから叱らないとダメでしょ?それに、そーくんは私のなんだから」


「・・・そーちゃん!やっぱりこんな虫なんかと付き合わない方がいいよ!長い目で人生を──────」


「・・・えっ」


 この場の誰も気づいていないようだが、ゆったりとした足取りでポケットナイフを片手に持っている霧響がリビングに入ってきた─────と思ったら、そのポケットナイフで自分の上半身の服を真ん中から切った。

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