第542話あゆの情

「あっ、あゆ!?な、なんで──────」


「どうせ私も後で入るんだったら一緒に入っちゃった方が良いなーって思っただけですよ〜、ぅぅっ、やっぱり先輩の裸姿は刺激が強いですね・・・!」


 それはどう考えてもこっちのセリフだ・・・だが俺だってこのまま黙ってやられるわけにはいかない。


「で、でも、そ、そうだな・・・あゆの体は刺激が強いからやっぱり1人で体を洗わせてもらっても─────」


「は〜い!お背中流しますよ〜!」


 そういうとあゆは無理やり俺のことを座らせて、シャワーのお湯を出した。

 シャワーの音がお風呂場に響く中、あゆが俺の背中に密着して俺の耳元に口を近づけて言った。


「逃がすわけないじゃないですか」


「っ!」


 あゆは冷たく、沈んだ声で言う。

 どうやら俺の姑息な作戦なんてあゆは最初からお見通しだったらしい。

 

「本当なら先輩とお風呂っていう貴重なイベントは大事にしたいですけど〜、すぐにそれ以上のイベントがあるので10分ぐらいで済ませちゃいましょ〜!」


「ちょっ・・・」


 そう言ってあゆは俺の背中を流すと言いつつも俺の前の方に手を回してきたので、俺は手でそれを制しようとするも、あゆがそれを辞めさせるための言葉を発する。


「今先輩はお金で私と契約してるんですよ?人権もないんです、抵抗したら犯罪ですよ?」


「えっ・・・」


 お、お金だけでそんな横暴が許されて良いのか・・・?


「いや〜、本当に先輩が契約書の文章を読まないぐらいチョロくて助かったですよ〜、契約書はゲームの利用規約とは違うんですよ〜?」


「うっ・・・」


 俺がゲームの利用規約をよく飛ばしていることが露呈してしまった・・・って!今はそんなことどうでもいい!


「あ、あゆ?」


「なんですかぁ?」


「こ、こんなことして良心は傷まないのか・・・?」


 俺は情に訴えかけることにした。

 どんな好意であれ少なくともあゆが俺に好意を抱いてくれてるなら俺が情を訴えかければ─────


「えっ!?なんですかそれっ?!私に命乞い的な可愛いことしてるんですかぁ!?ダメですよ〜、そんなことしたら余計に燃えちゃいます〜!」


「は、はぁ!?」


 あゆは俺の訴えかける作戦のせいでむしろ燃えたのか、すぐに俺の前の方に手を回してきた。

 ・・・え、これって抵抗したら本当に犯罪になるのか?契約違反的な・・・?

 い、いや、でも人権を契約だけで縛るなんてできるはずが──────


「ぅっ・・・」


「あはっ❤︎」


 あゆが俺の上半身の突起物を軽く人差し指と中指で挟み弄った。


「先輩こっちでも声出ちゃうんですね〜、やっぱり本当にオスなのか疑っちゃいそうです〜」


「・・・っ、ま、待て、あゆ、そ、そうだ、ふ、普通の恋愛をしたいんじゃ無かったのか?」


「・・・先輩がそれを言うんですか」


「・・・え?」


 あゆが一瞬、誰の声なのかわからないぐらい感情のこもった重みある声で言った。

 ・・・言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれない。

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