第531話結愛は本気
「・・・え、し、死ぬ・・・?」
「うん」
「・・・・・・」
死ぬって・・・いやいやいや、本当にそんなことするわけがない、こんな口だけのことで騙されてもし本当に浮気でもしたら本当に初音に殺されてしまう。
で、でも、もし本当だったとしたら・・・
「い、いや、し、死ぬとか冗談でも言わない方が良いって・・・」
「じゃあ私が今ここで手削ぎ落としたら信じてくれる?」
「えっ!?」
結愛はそう言うと包丁を取り出して自分の右手首に包丁を添えた。
「え、ゆ、結愛・・・?」
「・・・・・・」
ほ、本気なのか・・・?いやいや、きっと俺に承諾させるためにやってるだけで本気で切ったりしないはずだ、そうだ、冷静になれ。
結愛は自分の右手首に添えた包丁に少しずつ力を入れていき────右手首から少量の血が垂れた。
「えっ!?」
それでもまだ包丁に力を入れようとする結愛の左手から俺は結愛の右手首を傷つけないように包丁を奪い、包丁を遠くに投げた。
「なな、何してるんだ!」
「だから私は本気なんだって」
「・・・・・・」
もしさっき俺が止めてなかったら本当に右手首を切断する勢いだったし本当に本気なんだろう・・・
「じゃ、じゃあせめて初音に許可を取ってもいいか?」
「そんなのあの虫が許可するわけないよね?」
・・・確かに初音に許可を取れば何もリスクはないと思ったけど初音はそもそもそんなの許可しないか・・・
「そ、そうなんだけど・・・でもそうしないともしバレた時─────」
「バレなかったら良いの?」
「あっ、いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「じゃあどういうことなの?」
「・・・・・・」
これは・・・ど、どうすれば良いんだ?
と、とりあえず・・・
「ゆ、結愛?ちょっと考える時間をくれないか?」
「あのお風呂の時からが考える時間だったんだよ?」
「あー、いや、そうなんだけど・・・ゆ、結愛?断っても死ぬなんてことはやめてくれないか?」
「ダメ」
「そ、そんな簡単に命を捨てるなんてやめた方が良いと思うんだ」
「簡単にじゃないよ、そーちゃんが私を見てくれないならこの命に価値なんてないもん」
本当にいつも思うけど結愛のスペックがありながら本当に勿体無いと切実に思う。
「そ、そんなことないって、結愛は顔も可愛いし頭もいいから俺なんかが構わなくたって価値なんていくらでもある」
「・・・嘘付かないで」
「う、嘘なんてついてない」
今行ったことは全て事実だ。
「じゃあなんでそーちゃんは可愛くて頭もいい私と付き合ってくれないの?」
「えっ・・・」
「それが本当なら私と付き合わない理由なんてないはずだよね?」
「そ、それは──────」
「私と付き合わないってことは今までそーちゃんが私のこと褒めてくれた言葉は全部嘘ってことだよね・・・?」
結愛は声を震わせながら言うと、結愛は今にも泣き出しそうな目になった。
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