第442話霧響には甘い
そして翌日の土曜日、霧響がこの家に来る日になった。
俺はその当日になって、考えを深く巡らせている。何をそんなに考えているのかと言うと────女子3人と同棲しているなんて言うことをどう説明するか、だ。・・・いや、霧響は天銀が女子だと見抜いてたから正確には女子4人と同棲している事実をどう伝えるか、だな。
これが非常に難しい。既に霧響は俺と初音が同棲していると言うことは当然知っているので、そこは問題なし。
そして結愛も・・・問題は多少あるだろうが、小さい時から一応遊んだりはしているので一応セーフなはず。
「問題はあゆと天銀だな・・・」
百歩譲って天銀は基本的には常識人だから霧響が見逃してくれるはず・・・ここまで全て俺の都合の良いように霧響の性格を解釈してるけど、まあそれは置いておいて・・・
霧響があゆのことを看過してくれるとは思えない。
「性格からタイプまで全て違うしなぁ・・・」
本当にどうしたものか。いっそのことあゆのことを追い出そうとも考えたがそれこそあゆがそれを認めてくれるはずがない。
「まぁ・・・なるようになるか」
俺はそんな風に思考を放棄してしまい、リビングでくつろいでいるとリビング中にインターホンの甲高い音が鳴り響いた。
俺はインターホンに向かい、通話状態にする。
「はい」
『んんんっ!おおお、お兄様のお声!やっぱり素敵です!生お兄様は本当に最高────』
霧響がエントランスからのインターホンなのに、周りのことなど気にせず騒いでいるため、俺はそれを静止する。
「ま、待て待て、周りに迷惑だから、とりあえず上がってきてくれ」
『────そうですね、ごめんなさい』
霧響はそう言って、俺が開けたエントランスのドアに入っていった。
`生`お兄様っていう言葉がちょっと気になるから、そこは後で追求しておこう。
「あっ、霧響ちゃん来たの?」
キッチンにいた初音が、俺にそんな風に問いかけてくる。
「ああ」
「将来私の妹になる子だからね〜、もっと可愛がってあげないとっ!」
初音は既に実妹の師匠がいることを忘れてるのか・・・?もっとそっちを大切にしてあげてほしい。・・・そういえば、師匠とあゆは同い年か。
同い年だけあって少しだけ似ている節がある。
「とうとう霧ちゃんが来るんだ〜、昔からのお姉さんとしていっぱい優しくしてあげないとっ!」
なんで初音も結愛も霧響にはこんなに甘いんだ・・・もっとその寛容さを俺に向けてあげてほしい。
が、初音はそんな結愛の言葉に引っ掛かりを覚えたらしく・・・
「それは`昔`の話だから、今は私がお姉ちゃんだから邪魔しないでくれる?」
「え?霧ちゃんが虫の妹になんてなる訳ないでしょ?」
またしても初音と結愛が口論状態に入ってしまった。・・・これは日常茶飯事だとして、どうもさっきからあゆの様子がおかしい。顔つきからして焦っているのが目に見えてわかる。
「・・・・・・」
「ど、どうした?あゆ」
もしかしてあゆは実は人見知り・・・とか?
「先輩、まずいですよ・・・このままじゃ」
「こ、このままじゃ・・・?」
「私の年下ポジションが無くなっちゃいます」
「・・・へ?」
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