第438話ギャップ萌え狙い

「・・・あの、先輩」


「ん?」


 あゆが珍しく真面目な感じで聞いてきた。結愛がいなくなった時に聞いてきたって考えるとこの雰囲気も含め相当真面目な話なんだろう。


「先輩って本当にオスですか」


「・・・は」


 割とあゆが本当に真剣な雰囲気で言っている。・・・は。

 本当に何を言ってるんだあゆは。


「だってありえなくないですか!?普通男子高校生なんて毎日ナニかしててもおかしくないぐらいですよ!?」


「そんなこと言われてもな・・・」


 してないものはしてないし、別にしなくても大丈夫なんだろう。


「先輩・・・もしかしてがんとかになってないですかぁ?」


「・・・がん?」


 本当におかしなところまで発展してきたな。なんでそっち系の話からいきなりがんなんていう話になるんだ。


「男の人は出さないとがんになりやすくなるそうですよ〜?」


「そ、そんなわけないだろ!」


「・・・本当ですよ?」


「・・・え」


 が、がん・・・?い、いや、そんなまさか・・・

 俺が信じないという面持ちをしていることに気付いたのか、あゆがスマホで何かを検索して俺に見せてきた。何を見せられたって信じな────


「・・・・・・」


 そこには、細工したとは思えない量のあれを出さないとがんになる確率が上がるという記事があった。・・・え?


「だから私は今まで優しさで言ってたんですよ〜?」


「や、優しさ・・・?」


「はいっ♪先輩にがんになんてなって欲しくないですから・・・」


「あゆ・・・」


 もしかしたら今まで俺は勘違いしていたのかもしれない。俺の体調を気にしてくれて、俺のことを挑発したり嵌めたりスタンガンを当てたり監禁したり寸止めしたりとかして悪役を演じ、俺の性に対する謙虚さを取り払おうとしてくれた優しい後輩だったんだ。


「・・・って!なるわけないだろっ!」


「あっ、バレちゃいました?」


 何がバレちゃいましただ、冗談じゃない。

 体調を不安に思ってる、それだけのために嵌められてスタンガンを当てられて監禁なんてされてたまるか!大体スタンガンなんて下手したらがんよりも酷い。


「あ〜、このまま実は私が優しくて良い後輩っていう感じでギャップ萌え狙ったのになぁ〜」


 あゆはぼそっと漏らした。


「俺はそこまでちょろくない!」


「・・・え」


「・・・え?」


 あゆが驚いたような顔で俺のことを見ている。・・・何か変なこと言ったか?


「え、せ、先輩・・・今、なんて・・・?」


「なんてって・・・だから俺はそこまでちょろくないって・・・」


「・・・え」


「・・・え?」


 あゆがそのまま少し固まってしまったので、俺もそれに合わせて黙ることにした。・・・え?

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