第359話結愛とあゆの協定

「あの〜?私そっちの世界に興味ないんですけど〜?花の世界って言うんですか〜?そういう────」


「うるさい、殺す」


「待ってくださいよ〜、ん〜、あっ!白雪先輩のこと邪魔だと思いませんか?邪魔じゃないにしろいない方がよかったな〜とか」


 あの虫が邪魔だと思わないか・・・?邪魔じゃないにしろいない方がよかった・・・?そんな温いものじゃない。あの虫さえいなければ今頃私とそーちゃんは運命の恋仲になってそーちゃんの性格的に子供は作ってないにしろ予行練習ぐらいはできてたかもしれないのに・・・


「・・・・・・」


「あっ!やっぱり思いますよね〜!」


 何も言ってないのに・・・なんなのこの女。そーちゃんの周りって私以外変な女ばっか。とりあえずこいつを殺すことに違いはない。


「なので・・・これ見てください!これできっと私と仲良くしてもらえるはずです!」


 そう言ってこの女は倒れたその状態で右手に持っていた大きな袋を見せてきた。


「これ、わかります?」


 見たところ野菜とかお菓子とかの食品が入ってる。


「これ20日分ぐらいの食料なんですよ〜」


「・・・それが?」


 20日分の食料なんてあって困ることはないだろうけど別に今見せるようなものじゃないし、賞味期限だってもったいない。


「もちろん非常食とか賞味期限が多いやつとか温めれば賞味期限が関係ないやつとかもあったりしますよ?ま、そんなことはどうでもいいとして・・・ここからは私の提案なんですけど・・・」


 そう言ってこの女は私の耳元に顔を近づけておそらく口角を上げながらいった。実際に見てるわけじゃないけど声だけで顔がニヤけてるのがわかる。


「20日間白雪先輩を家から追い出して最王子先輩だけを家に残して立て篭れたら素敵だと思いませんか?」


「・・・・・・」


 確かにあいつがいない状態でそーちゃんと20日間も同じ空間だったらいくらでもどんなことでもやりようはある。しかもそーちゃんは元々運動神経が良いわけじゃなかったけど、今は私が足を怪我させてしまったせいで、不幸中の幸い、そーちゃんは全くの抵抗ができない。


「・・・追い出すって、どうするの?」


 ちょっとどころかかなりムカつくけどあいつは一応頭が回る。その頭の回転をそーちゃんじゃなくてもっと別のことに使えば何か結果を残せると思えるほどに・・・はあ、なんでそーちゃんあんなのに好かれちゃったんだろ。

 そーちゃんの魅力をわかるのは私だけでよかったのにな・・・やっぱり一度でもそーちゃんから離れた私のミス・・・はあ。


「簡単ですよ〜、帽子でも被って下向いて顔を見えないようにしながら「宅急便で〜す」とかって言って一瞬でも開けさせることができれば・・・わかりますよね?」


「・・・うん」


 こうして私はどこの誰とも知らない女と一時的に協定を結ぶことになった。とりあえず邪魔なのはあの虫、その共通認識がある限りはある程度信頼できるかもしれない。でも・・・


「私とそーくんだけじゃなくてあなたもいるんでしょ?」


「まあ、それはそうですけど?例えば私がお風呂入ってる時とかは一時的に2人きりになれるじゃないですか〜、それはお互い様ですけど」


 確かにお風呂に入ってる時とかは一時的に2人きりになれる・・・その間でそーちゃんとより親密になれるのはこの女より幼馴染の私なはず・・・


「それに、白雪先輩と先輩を引き離すだけでも意味があると思いませんか〜?」


 あいつは寄生虫だから基本的に何をしても離れないけど、2人がかりなら無理やりにでも引き剥がせるかもしれない。


「わかった、いいよそれで」


 私はその提案を承諾すると同時に、下にしゃがみ込むような体勢から立ち上がって、この女も私の下から立ち上がった。

 こうして、何も知らない女と一時的に協定を組むことになった。

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