第334話後輩の観察眼
「・・・先輩からメスの匂いがします」
何を言ってるんだこの子は。
「まあ、初音がいるし・・・」
「・・・えっ、もしかして一緒に生活してるんですか?」
そ、そうか。確かにそうだ。俺が今まで当たり前だと思って完全に麻痺してたけど高校生で同棲するなんて普通おかしいか、しかもこんな高そうなマンションで・・・どうする、ここは誤魔化すべきか?
「いや、た、たまたま家にいるだけ───」
「一緒に生活してるけど、それが何?」
いつの間にか初音がちゃんと服を着ていた。もし早着替え大会があったら世界を狙えるぐらいには早いと思われる。
「へえ・・・白雪先輩からは興奮している時のメス特有の匂いがしますよ〜?」
そう言って初音のことを隈なく観察しだした。
「ちゃんと見てみると着衣も乱れてますし〜、口元から首元にかけて何かの液体が垂れてるのはなんでなんですかね〜?」
この子がそう言うとしばらく場に沈黙が流れた。
「もしかして、お楽しみ中でした?先輩」
「えっ・・・」
この子の探るような目が痛い。・・・いや、それだけじゃない。探るっていうか・・・無理やり掘り起こそうとしてるような目だ。見てると吸い込まれそうとはこのことを言うんだろうな。
「別にそんなんじゃ、ない」
「ふ〜ん、そうですか〜」
「・・・それよりなんのようなん───」
「そーくん」
「はい」
俺はすぐに口を止め目を閉じて見せた。その様は周りから見れば統率された軍隊のように見えるかもしれないけど実はこの前もしまたこの子が現れたらどうするかと散々教え込まれた。
「うわぁ・・・やっぱり別れた方がいいですよ〜、こんなの恋愛じゃなくて奴隷じゃないですか〜、私だったら本当の恋愛を先輩に教えてあげることもできますよ?・・・女の味とか」
`ピクッ`
いけないいけない、思わず肩を少し動かしてしまった。冷静になれ、冷静に。そういうトラップだ。
「ねえ、いい加減邪魔しないでくれる?」
「・・・ちょっと白雪先輩、外に出てもらってもいいですか〜?」
「・・・まあ、いいよ、これ以上そーくんの体に悪影響になるようなやつ近くに置いておきたくないし」
「ですよね〜、じゃあ外でお話ししましょ〜」
そう言って俺が目を閉じていると2人が外に行ったのがドアの閉まる音と、足音でわかった。
「・・・そろそろ目を開けてもいいだろう」
俺はゆっくりと目を開け、これからどうなるのかと内心ヒヤヒヤしていた。
「・・・ん?これは・・・」
俺の膝下にいつの間にかメモ用紙が置かれていた。
『私の電話番号です❤︎何か困ったこととか夜伽が必要な場合はご連絡ください❤︎』
夜伽は確実にないとして困ったことがあったとしてもあの子に連絡したら初音に何をされるか、いやそれ以前に恋人がいるのに他の女性とそうそう簡単に連絡なんて取れない。・・・連絡を取るぐらいは普通なのか?
「・・・・・・」
初音のせいで普通がわからなくなってきた・・・
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