第316話同じマンションの住人だった

「・・・・・・」


 今日は林間学校のことで生徒会で色々と話すことがあると言って初音は生徒会に行っている。俺も一応生徒会役員っていう判定らしいけど初音が「こんな俗事にそーくんを巻き込めるわけないよ!」とか言って俺に真っ直ぐ帰るように言った。真っ直ぐっていうのは、今日はもう街を通らずに帰ってということだと思う。

 俺としてもこれ以上あのメイド服の子に絡まれるのはごめんだ。そのせいで初音に浮気を疑われるなら喜んで街なんて通らずに帰ることにしよう。

 俺は俺たちが住んでいるタワーマンションの前まで到着し、そのエントランスに足を踏み入れ───


「あっ!ちょっと待ってくださ〜い!」


 そう叫ぶ言い方が悪いけどぶりっ子的な感じの声が聞こえてきた。俺にはこんな知り合いはいないため無視する。


「なんで無視するんですか〜!」


 左手首を掴まれる。俺のことだったのか・・・?俺は後ろを振り返りその子を見るも、やっぱり知らない人だ。


「だ、誰・・・?」


「え〜?忘れちゃったんですか〜?」


 忘れたも何もこんな人知らない。本当に誰なんだ。


「ほらっ!この前手繋いだじゃないですか〜!」


 こんな見知らない女の子と手を繋ぐわけがない。大体そんなことしたら初音に怒られ───あ。


「思い出した!あのメイド服の人か!」


「はい!そうです〜!」


 メイド服の印象が強すぎて全く思い出せなかった。それにしてもなんでこの子がこんなところにいるんだ?


「な、なんでここに・・・?」


「なんでって・・・もちろんあなたを追いかけに来たんですよ〜!」


 嘘だろ、まさかストーカーしてきたのか?あんなちょっとしか話してないのに?


「嘘つけ!」


「はい、冗談です♪ここ私も住んでるんですよ〜!」


「なんだ冗談か・・・え?今なんて?」


「ここ私も住んでるんですよ〜!」


「・・・・・・」


 まさかここの住人だったなんて・・・じゃあ今ここで会ったのもたまたま、なのか?怖すぎるだろ!


「・・・・・・」


 まあ、でもそういうことなら別に話すこともないし早くこの場を切り抜けよう。こんなところをもし初音に見られたら校則変更どころじゃ済まされない。

 そう思い至った俺はすぐにその場を後にしようとするも、ツインテールの少女はついてくる。


「よかったら私のお家来ませんか〜?」


「行かない」


 こんな見ず知らずの子の家になんて行けるわけがない。


「え〜?お茶出しますよ〜?」


「大丈夫ですさようなら」


 俺はやや強引にその場から離れることを決意した。すぐにエレベーターまで走り、エレベーターに乗った瞬間にエレベーターの扉を閉めた。


「はあ、なんだって言うんだ」


 俺はよくわからない事態に困惑せざるを得なかった。

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