第312話バイト探し
「・・・何か言う事はある?」
「ちょっ!その前にそのでかいハサミなのかなんなのかわからないやつを置いてくれ!」
初音は両手で持たないと持てないほど大きなハサミ・・・携帯用ギロチンって言った方がしっくりくるようなものを明らかに俺の下半身に視線を向けて持っていた。・・・そんな冷静に分析してる場合じゃない!
「じゃあなんで手なんて握ってたの?」
「それは相手から勝手に握って来ただけで・・・」
「じゃあ振り払えばよかったでしょ?」
「それは・・・もし振り払ったりして相手が倒れたりしたら色々問題になるかと思って・・・」
「そんなの街中なんだし監視カメラ見ればすぐに解決する事だと思うんだけど?」
口では女の子に勝てないとか言うけど、残念なことに俺は力でも初音に勝つことはできない。どうすればいいんだ・・・
回答に戸惑う俺に初音は一瞥して言う。
「そーくんは今自分が悪いって自覚してるの?反論できないってことはそれが決定したって事なんだよ?で、悪い人がすることって言ったら何かわかるよね?」
「・・・すいませんでした」
「うん♪」
もしかしたら俺の人生はこんな感じで一生初音に屈服する人生になるのかも知れない。今更言うまでもないけど俺が初音に勝てるところはひとつもない。そろそろ本当に俺も何か自主的にしないとな・・・
そういえば前は初音と霧響の2人がいて警戒網が強かったからなかなか踏み込めなかったけど、こっそりバイトをしてみるのもいいかも知れない。もちろん初音の監視は常に怠られないだろうけど、初音だって人間・・・多分。
じゃなくて、初音だって人間なんだから隙はあるはずだ。その隙にバイトを探しだすことができたら、バイトもするという考えにシフトしよう。
「・・・・・・」
初音は何かを感じ取ったのか一瞬俺に視線を送ったけど、その視線を逸らした。
俺はすぐさま自分の部屋に入り、布団の中にくるまった。
布団の中にくるまった理由は初音に口で負けて悔しかったからとかそんな理由ではなく、バイトを探すためだ。
流石の初音も布団の中にまでカメラを仕掛けているなんてことはありえない。仮に盗聴器とかがあったとしても音声なんて流れないからなんの問題もない。
「よし・・・!」
俺はベッドの上の布団の中で密かに喜びの声を上げた。
かといって、高校生にできるバイトなんて相当に限られている。おまけに俺は頭がいいわけでも力があるわけでもない、むしろ無い方だ。
そう簡単に見つからない事は分かっている。それでも諦めずにこっそりバイトを探す日々を送っていた俺の計画は、とある日の学校の朝会で、幕を引くことになった。
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