第311話あざとい女の子
さらに翌日の放課後、またしてもメイド喫茶のある街を通って帰ることになった。これじゃこっちが嵌めてるみたいだけど仕方ない・・・
頼むから今日はあの子とは会いたくないな。もしこれで今日も会ってしまったら昨日の初音の言葉を信じてしまうしかなくなる・・・そうなると俺は人間不信コース直線だ、頼むから来ないで───
「あっ!昨日と一昨日の人!昨日ぶりです!」
「あ、ど、どうも・・・」
言われてみればちょっとあざとい感じな気もするけど・・・いやいやいや、これこそ人間不信の考え方だ、昨日初音に変なことを吹き込まれたから動揺してるんだ、俺は人間不信にはならない!
「ど、どうしたんですか・・・?」
「あ、いや、なんでも・・・」
「あっ!今日はお店に来ていただけませんか?」
「えっ、あーえーっと、今日は用事が───」
「随分と多忙なんですね、クスッ」
そう言って営業スマイルを見せた。・・・いや、怖い。なんか怖い。何がかは具体的にはわからないけどとにかく怖い。
「あー、そうなんですよ、はは、じゃあ・・・」
俺はいち早くこの場を抜け出すために話を切り上げようとしたが、ここでこの子から意味のわからない提案をされてしまう。
「じゃあその用事について行ってもいい、ですか?」
と、上目遣いで言われてしまう。・・・そんなこと上目遣いで言われても何もドキッと来ないし、そもそも提案の意味がわからない。
「・・・え、いや、は?ついてくるって・・・」
「私としてはメイド喫茶に来てほしいので、私でお手伝いできたらいいな〜って思ったんです」
なるほど、そういうことか───とはならない!普通そんな見ず知らずの人の手伝いをしようなんていう考えになはらない。よって、この子は普通じゃないけど、ここで問題なのはどっちの普通じゃないか、だ。
一つは単純にものすごく優しい人なのか、もう一つは初音みたいに怖いタイプの人間なのか・・・前者であることを信じたい。
「て、手伝えるような内容じゃないから───」
また俺が話を切り上げようとするも、手を握られて引き止められてしまう。
「お願いします、お手伝いさせてくださ───」
この子がまたしても意味のわからないことを言おうとした瞬間、もう我慢ができなくなったのか、目に見てわかる紅潮した初音が俺の後ろに来た。
「そーくん、ちょっと」
「えっ、いや、は、はい・・・」
そして俺は初音に救われる形でその場を後にした。・・・なんていうのは形だけで、地獄へと誘われることになった。
「・・・・・・」
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