第295話天銀のプール相談

 休み時間に天銀に呼び出され、人気のない体育館横に連れてこられた。


「・・・困りましたね」


 天銀は一言そう言った。その言葉だけで何に困っているのかはわかる。


「────プールか?」


「はい、聞けば、男性用スクール水着は上半身が裸だと聞きます」


「まあ、それは・・・前の学校ではどうしてたんだ?」


「前の学校ではそもそもプールなんてありませんでした」


「え、なかったのか?」


 どんな学校なんだ。今時プールがない学校は・・・あるにはあるだろうけどかなり珍しいな。最近増えてきてるオンライン学校的なやつか?それなら納得がいく。


「そもそもプールなんて小学生の遊びが高校生にもなってあるなんて想定していませんでしたから」


 ・・・そんな感じでもないな。ますます天銀という人間がわからなくなった。


「プールの授業でさらしを巻くわけにはいきませんし、かといって全部休むわけにもいきません」


 プールか・・・こればっかりは俺にはどうしようもないな。俺はスマホを取り出して電話をかけた。───霧響だ。霧響は今も俺の部屋にいるはずだけど、何か作業をしていたら出ない可能性も───


『お兄様!お電話なんて珍しいですね!どうしたんですか?』


 どうやら杞憂だったらしい。


「霧響、天銀がプールで───」


『もうそのワードだけでわかったので後は結構です、おそらく水着関連でしょう』


 さすが霧響だ。俺は学校のプールの話とかは全く霧響とはしてないのに一瞬で理解してくれた。


「そうだ、水着で授業に出れないっていう話なんだけど、どうすればいいと思う?」


『そうですね・・・日焼けが嫌だということでウェットスーツなどを着用してはどうでしょう?それで中に防水性のさらしなどを巻いておけば大丈夫でしょう』


「なるほど、ウェットスーツ・・・あまりそういうものには詳しくなかったので助かりました、ありがとうございます」


 天銀が電話越しに霧響にお礼を言った。これでなんとかなりそうだな。


「ありがとう、霧響、じゃあ切る───」


『ままま、待ってください!せっかく珍しくお電話をかけていただいたんですからもっとお話ししましょう!・・・私としたことが失敗しました、答えをもっと先延ばしにしていればもっと長くお兄様と───』


「わ、悪い、もうチャイムがなるんだ・・・」


 俺はそう言い、通話を切った。実際もうあと2分前ぐらいだ。


「わざわざ呼び出してしまいすいません」


「あ、いや、気にしなくて大丈夫だ」


 友達の相談に乗るっていうのも、青春って感じがしていいな。


「ところで最近少しだけ細くなりましたね、後ろから見ているとよくわかります」


「後ろ・・・?俺は天銀の後ろの席───まだストーカーしてたのか!」


 俺は友達・・・の相談を受け、無事に解決して教室に戻った。

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