第278話霧響の本性

「っ・・・!」


 こうしてると中学生の時を思い出す。今でこそちょっと丸くなったけど俺が中学生の時は霧響はこれよりもっと怖い感じだった。一度「私の下着を嗅いで興奮してください演技でもいいです」とか割とガチな真剣な顔で言われた時は心臓が止まるかと思った。まああの時はまさか霧響が俺と結婚したがってるなんて思わなかったし、やってたこともそんな思いとは真逆のことばかりだったし・・・仕方ない、こうなったら俺も少し昔を思い出して厨二病で対応しよう。昔には昔で対応しよう。黒歴史にはなってしまうが霧響が本性を表した以上仕方ない・・・


「ふっ、土下座するのはお前だ霧響!今こそ我が左目に宿る邪の力にひれ伏すがいい!ふはははは!審判の時はきた!ジャッジメントだ!」


「・・・はい?なんですか?もう一度言ってください」


 嘘だろ、聞いてなかったのか?今の渾身の言葉を・・・恥ずかしい。


「だ、だから土下座するのはお前だ霧響!今こそ我が左目───」


「それは反抗ととってもいいんですよね?」


「・・・え?」


「私に反抗する意思をそんな恥ずかしい言葉を使ってまで示したということ、いいんですよね?」


 恥ずかしいとか他人に言われるとなんか余計に恥ずかしくなるな・・・


「ふ、ふふ、そうだ、おおお、俺はもう妹のお前に怯みはしな───」


「妹・・・?」


 あっ、しまった・・・


「・・・そうですか、妹扱いしないという話まで破るんですね、そうですか、これはもう本当にただ事じゃ済ませませんよ」


「えっ・・・」


「では、ますは・・・お兄様こちらに来てください」


「え、どこに───」


「いいですから、早くしてください」

 

 相当怒ってるな・・・こんなに怒ってる霧響を見るのはそれこそ一年ぶり以上だな。ここは従っておこう。


「こ、ここは・・・」


「テラスです、ベランダとも言いますがこの広さならテラスでもいいでしょう」


 あんまり来たことなかったけどやっぱり広いな。


「お兄様、手を貸してください」


「手───!?」


 すると霧響は俺の手を引っ張って、テラスの端においやり、俺のことを軽く持ち上げて、俺のことを床も何もないところに置いた。つまり・・・崖に落ちる寸前の手を床にかけているみたいな状況だ。って!


「ななな、何するんだ!こんな高さから落ちたら死ぬ───」


「まずは腕の筋肉トレーニングです!お兄様!腕の筋肉の力を少しでも弱めると死んでしまいますので集中してください!」


 鬼すぎる。アニメとか漫画とかでもここまで鬼な筋トレなんて見たことがない。仕方ない、大声を出して助けを呼ぼう。


「誰か〜!助けて────」


「助けてとはなんですか?これは筋肉トレーニングです、大声なんて出さないでください近所迷惑です、もし次大声なんてあげたら・・・わかってますね?お兄様の命は今私が握ってると言うことを覚えておいてください」


「・・・は、はい」


 これが本当に俺と血が繋がってるのかと恐怖を抱きながら俺は死なないことに必死になって霧響のいう筋トレをした。

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