第275話天銀は女の子

 とうとう行くところまでおかしくなったな。性転換でもするつもりなのか?


「こんなことで性転換なんてやめといた方がいい、第一、天銀が女の子なわけがないだろう、女の子なら───」


 俺は天銀の胴体を触った。うん、大丈夫だ、やっぱり胸はない。これでもし天銀が本当に女の子だったら俺は犯罪者になっていたけど、よかった。


「なっ・・・!ななな、なにするんですか?!」


「な、なんでそんなに動揺してるんだ・・・?」


 まあ人によっては同性にだって体を触られたくないって奴はいるだろうけど、服の上からで、しかも一瞬だけだ。そんな一瞬でこのリアクションはなんなんだ。


「だから言ってるじゃないですか、僕は女性だと、今、その証拠を見せます」


 そういうと天銀は俺に背を向けて服を脱いだ。


「な、何してるんだ?」


 まさか天銀は本当にそっち系のやつなんじゃないか?だとしたら俺にはそんな趣味はないからこの場は引いて───


「・・・え?」


 天銀は上着を脱いだ。すると、天銀は女の子が切るような薄着を着ていて、それを脱ぐとブラジャーのホックらしきものが背中に現れた。


「天銀・・・警察に行こう」


「なんでですか!」


「探偵であることをいいことにこんな犯罪をしてたなんて!こんなの犯罪になるだろ!」


 女装罪とかあるのかわからないけどとりあえず警察に連れて行って悪いことはないだろう。早く連れて行かないと────


「だから僕は女性ですと、何度言えばわかるんですか」


「そ、そう言われてもな・・・」


 どう考えても女装趣味のある変態にしか見えない。天銀は俺と向き合っ────


「天銀、なんだその包帯は・・・け、怪我でもしたのか?」


 天銀は胸部に白い包帯を巻いている。


「包帯ではなく、さらしです」


 そう言いながらその晒しを解いていった。すると・・・


「なっ・・・!?」


「こ、これで、わかっていただけましたか・・・?ぼ、僕は女性です・・・」


「こ、これは・・・」


 天銀が左腕の上に置いているものは、明らかに女性の胸だった。それもかなりでかい。おそらく霧響よりも全然でか───って!そんな目算してる場合じゃない。ちょっと待て、天銀が本当に女の子だったとしたら───


「さっき最王子君が、僕の胸を触ったのも犯罪ですね」


「なっ・・・」


 男女かどうかの確認のためとはいえ、俺は天銀が男だと思って胸を触った・・・なんて言うのは言い訳にしか聞こえなくて犯罪になるだろう。


「で、でも、天銀だってストーカーで犯罪だ」


「ええ、そうですね・・・ですから、取引しましょう」


「と、取引・・・?」


 こんな話の流れで取引をする探偵なんて、世界中のどこを探してもいないだろうな・・・

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