第274話総明のストーカー

「行ってきます」


「行ってらっしゃいませ、お兄様!」


 今日は男生徒だけがせっかくの土曜日なのに呼ばれている。といっても別に男子が何かをしたというわけではなく体育で男子のカリキュラムが少しずれてしまい、その埋め合わせとしてだそうだ。女子は明日似たようなやつがあるらしい。初音が「私もついていく!」とか訳のわからないことを言ってたけど、さすがに学校についてきても何もできないだろと言ってなんとか断った。


「・・・・・・」


 が、俺はエントランスからマンションの外に出た瞬間に気づいた。明らかに視線があると・・・そしてその視線の方向を見てみると、すぐに誰なのかわかり、俺はそっちに向かった。


「な、何してるんだ?あ、天銀」


「ヘっ?!い、いえ、別になんでもありません」


 なんでもないことないだろ、なんでもないなら今の「へっ?!」はなんだったんだ。女の子みたいな声だったな。


「なんでもないならなんでこんなところにいるんだ」


 こんなマンション前の花とかが置いてあるところに隠れるようにいたのに何もないわけがない。もしかしてまた初音が浮気調査とか変なことを依頼したのか?


「僕は前白雪さんに浮気調査を依頼されました」


「そ、それは知ってる・・・」


「そして僕は、最王子君を尾行するのが`癖`になってしまいました」


「・・・く、癖?」


 人を尾行する癖って、それただのストーカーじゃないのか?


「はい、最王子君のことを尾行する癖です」


「・・・探偵としての天銀に聞くけどそれはストーカーにならないのか?」


「探偵として言うのであれば・・・ストーカー行為に該当しますね」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「何澄ました顔で該当しますねとか言ってるんだ!該当するなら早く帰れ!」


 どういう神経してるんだ。これが探偵の行き過ぎた結果なのか?でも恋愛観とかその他のことは結構俺と同じ意見だったのに、もしかしてどこか抜けてるのか?どこか抜けてるなら抜けてるなんてレベルじゃないけど。


「・・・・・・」


 なんでその答えが沈黙なんだよ。


「はあ、なんで同学年の男子にストーカーされなくちゃいけないんだ、俺にはそう言う趣味はないんだ、だから────」


「男性でなければいいんですか?」


「・・・は?」


「ですから、男性でなければいいんですか?」


 男性でなければいいんですかって・・・まあストーカーされるなら俺的には男性か女性かと言われればそれは女性の方が気持ち的にましな気がするけど初音と付き合ってる以上そんなことは言えない・・・けど、天銀はなんでそんなことを聞いてきたんだ?まあ、普通に返答するか。


「まあ、されるなら女性の方がいいとは・・・」


 初音がいる限り男性でも女性でも一緒だろうけど。


「なるほど・・・で、では、一つ明かしたいことがあります」


「ん?なんだ?そんな改まって」


 天銀は何故かもじもじとしだして、少し間を空いて、頬を赤らめながら言った。


「じ、実は・・・ぼ、僕は・・・じょ、女性なので、さ、最王子君的には、大丈夫、ですよね・・・?」


「・・・は?」

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