第267話霧響の裸体と覗き
「どういうことですか白雪さん！ここ混浴だったんですか！？もし混浴だと知っていたらいち早くお兄様の元に向かってましたのに！」
「できるだけ長くそーくんと二人きりになるために嘘ついちゃった♪」
話の展開がよくわからないけど、とりあえず霧響に助けられたな。
「私が来たからにはもう二人きりにはさせませんからね！」
いつもなら恐怖を感じるところだけど今ほど霧響を頼もしく感じたことはない。
「頼んだ、霧響」
「はい！お兄様！」
霧響がきてくれたおかげで前を洗うという話はなくなり、俺たちは3人で露天風呂に浸かった。
「はー・・・」
生き返るとはまさにこのことだろう。そういえばさっきから気になっていたことがある。
「それにしてもなんでここ全然人いないんだ？」
混浴だからいる人が少ないとは予想してたけど俺たち以外誰もいないのはいくらなんでも不自然すぎる。
「ななな、なんでだろうねねねねね？」
なんだそのあからさますぎて逆に怪しくないような過剰なリアクションは。
「な、何かしたの────」
「白雪さんとばかり話してずるいです！それよりお兄様！何か感想はないんですか！？」
「か、感想？」
「私の裸体ですよ！ら！た！い！」
裸体って言われてもな・・・バスタオルしてるし、っていうか妹に対して別になんとも思わないっていうのが本音だけどちょっと前に妹扱いしないって約束してしまったからそれを破ると霧響まで怒りそうだ。
「あー、可愛いと思う」
「なんですかその適当な感じは！」
「バレたか・・・」
「バレたかじゃないですよ！ちゃんと事細かに感想を言ってください！！」
むしろ妹のバスタオル巻いた姿に対してあれこれ感想言う方が俺は嫌だな、っていうかそんなやつがいたらちょっと引いてしまうかもしれない。俺は自分で自分に引いたりしたくないんだ。それにしても不思議だな、女性という観点では同じなのに妹というだけでこんなに何も感じなくなるなんて。
「事細かにって言われても、本当に何も無────え？」
・・・なんだ？この温泉は加工された竹のような長いものを何本も横に立てて並べることで壁として機能して、男女とかで分かれてるっていうのはここに入った時にわかったけど・・・
「あれ、思いっきり覗こうとしてないか？」
竹の上に誰かの手がある。さすがに作業員とかじゃないと思う、今営業中だし。だとすると誰かが覗こうとしてるとしか考えられないけど・・・あの加工された竹は1本1本が電柱柱の3分の2ぐらいあるのに一体どうやってるんだ？何かに乗って────
｀スパッ｀
「えっ・・・」
初音が何かをあの手の向こうの人物の頭に当たるように角度調整して投げた。
｀ズドッ｀
今明らかに当たった音がしたな。
｀ボドン｀
水に落ちた音がした。おそらく覗こうとしていた人が落ちたんだろう。
「い、今何投げたんだ？」
一応聞いとかないと、もし命に関わるようなものだったら・・・まあこれに関しては相手が悪いんだし、正当防衛的なやつで許してもらえるだろう。
「鈍器───間違えた、桶」
「どんな間違い！？」
「普段万が一の時に備えて鈍器投げる練習してるの」
「どんな時だよ・・・」
「そーくんが浮気現場を私に目撃されて逃げようとした時のことかな」
万が一にしては随分しっかりとシミュレーションしてるな・・・
「って、え？もしその状況になったら俺に鈍器投げるつもりなのか？」
「うん、まあとりあえず足だけ狙って動けなくしてって感じかなー」
「・・・・・・」
もちろん俺は浮気なんてするつもりはないけど、もし初音が勘違いして俺が浮気してると思ったとしたら俺は鈍器をながられるのか・・・それは嫌だ！
「それにしても、そーくんのこと覗こうとするなんて、これこそ本当に死刑だね」
「死ぬだけではダメですよ、お兄様の聖体を無断で拝もうとしたんですから死よりも恐ろしい苦痛をお与えしなくては・・・」
なんで覗こうとした人が俺のことを覗こうとしたと思ってるんだ、普通は初音か霧響かもしくはその両方だろ。・・・まあ、言わなくていいか、死よりも恐ろしい苦痛とか言ってるけど、さすがに犯罪に抵触するようなことはしないだろう。
「・・・いや、この二人ならするか」
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