第196話暴走する初音

「・・・・・・」


 まさに怒涛の嵐だったな。なんなんだよ`妹論`って。よくもまああんなにも長々と妹という議題だけで話を広げられるもんだな。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 そして霧響が最後に残していった言葉は本当だ。俺の腕はもうほとんど限界に近い。なんで30分も霧響の話を右から左に通しながら初音のことを抱っこしておかないといけないんだ・・・でもやっぱりそんなことを言うと今までの苦労が台無しになるのでまだ言えないでいる。


「初音、そろそろ座らない、か?」


「・・・いいよ」


 ほっ・・・俺はようやくこの体勢を辞められるのかとほっとした。そして俺は初音から手を離し普通に座ろうとした、が・・・


「何普通に座ろうとしてるの?」


「え?座ってもいいって──」


「抱っこしたままに決まってるでしょ?」


「・・・はい」


 俺は初音の言う通りにお姫様抱っこした状態でソファーに座った。・・・世間ではDVがどうのとか言って男性が責められたりしてるらしいけど俺の主観だけで言えば女の子の方が十分怖い。


`べちゃ`


「つめたっ!」


 初音が俺のシャツを明らかにわざとお茶をこぼした。


「な、なんのつもり──」


「あ、ごめん、わざとじゃないけどお茶をこぼしちゃったから洗濯するから服脱いでー」


 なんだその説明的かつ棒読み感がすごい謝罪は・・・


「いや、このぐらい別に大丈夫──」


`べちゃべちゃ`


「つめたっ・・・!」


 初音はさらにお茶を俺にこぼすと言うより`当てる`勢いで濡らしてきた。


「そんなに濡れちゃったら風邪引くかもしれないし、早く脱いだ方がいいんじゃない?」


「なんのつもりで──」


「脱いだ方がいいんじゃない?」


「・・・わかった、じゃあちょっと着替えてくるからここで待っててくれ」


 俺が着替えのために自分の部屋に戻ろうとしたら初音がまたしても引き止めてきた。まさかお姫様抱っこした状態で俺の部屋まで連れて行けとか言うんじゃないだろうな・・・


「服脱ぐだけ脱いで」


「・・・え?」


 今回のは意味不明すぎるな。服を脱ぐだけ、脱いで・・・?


「服を脱ぐって、え?ただ脱げってことか?」


「そう言ってるじゃん」


「・・・いや、え?」


 服脱いでとかそんな軽々しく言うことなのか?あまりにも普通の顔で言ってきたから聞き返してしまった。


「さすがにそれは──」


「私の言うことが聞けないの?」


「えっ・・・」


 なんか俺が知らない間に怒ってるを通り越してなんか危ない感じになってしまっている気がする。

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