第194話お姫様抱っこ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
どうしようこの空気、本当に圧力がすごい。機嫌を良くしようにもどうすればいいんだ?妹の下着を一緒に買いに行ったのを彼女のバレた時の対処法、なんていうぴったりな条件なんて他の誰も経験したことないだろうからネットで調べても仕方ない。
「初音、そういえば今日はいい天気だったよなー」
「そうだね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いや、空気重っ!まあ確かに彼氏が妹の下着を一緒に買いにってるなんておかしすぎる話だけど・・・
「お茶」
「・・・え?」
「お茶持ってきて、立ちたくない」
いつもの初音からは考えられない言動だな。
「わ、わかった」
そして俺が立とうとした瞬間・・・
「そーくんが立ったら私も立っちゃうじゃん、私立ちたくなって言ってるんだよ?」
「え・・・」
そんな無茶な、動かずにお茶を入れるなんて無理な話だ。
「そんなの無理に決まって──」
「・・・抱っこ」
「え・・・?」
「お姫様抱っこしながらお茶入れて」
「えっ・・・」
「お姫様抱っこなら私立たなくていでしょ?」
「・・・・・・」
嘘だろ・・・これはこれでまた怒らせてしまうかもしれない。なぜなら俺にはおそらく初音を抱っこしながらお茶を淹れられるような腕力はないからだ。初音が重いとかそういう理由じゃなくて単純に腕力がない。っていうか片手で抱っこして片手でお茶を入れるなんて高等技術できるやつの方がおかしい。
「初音、それは──」
「何?私が重たいって言いたいの?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
仕方ないとりあえず抱っこしてから考えよう。いつもなら抱っこなんて恥ずかしくてできるわけないとか思ってるけどさすがに今の状況でそんなことを言えるほど俺の頭も廃れてはいない。
「ふっ・・・!」
俺は座っている初音をなんとかお姫様抱っこしてみせた。なんだ、思った以上に余裕だな。でもこの状態でお茶を入れれるのかと言われたら反応に困ってしまう自分もいる。
「初音、この状態でお茶を入れるのはちょっと厳しい・・・いや、重いとかじゃないんだけど、単純に両手塞がってるし・・・」
「・・・仕方ないね、じゃあこのままでいいから私のこと冷蔵庫前まで連れて行って、この抱っこされた状態でお茶入れるから」
「わ、わかった・・・」
そして俺は抱っこした体勢のまま冷蔵庫前まで行った。すると初音は冷蔵庫を開けせっせとお茶をいれ──
「あー!お兄様に抱っこしてもらってるなんてずるいですっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます