「な、なあ、とにかく言う通りにするから、早く手をどけさせてくれないか？」

　何が悲しくて妹の・・・なんてずっと掴んでいなければいけないんだ。

「ダメです、そんなことをしてしまってはまたお兄様が素直にしてくださるじゃないですか」

「そ、それは──」

「あと、私の何から手をどけさせてほしいんですか？」

　こ、こいつ・・・！顔を見なくてもわかる。絶対に笑ってる。そして、今俺は絶賛遊ばれている。

「俺が今触れている場所だ」

「部位名を言っていただかないとわかりません、ほら、部位名をおっしゃれば私が手を離すかもしれませんよ？」

　ダメだな、今はとりあえずしたがっておいた方がよさそうだ。何か他のことを考えて紛らわすしかない。

「わかった、で、言う通りにって言うのは、具体的に何をすればいいんだ？」

「まず、ちゃんと目を開けてください」

「な、何のために？」

「私とお兄様のために」

　何が俺のためなんだ！俺が散々妹の裸なんて見たくないって言ってるのに・・・

「断る、そんなことをしたら俺は──」

「きゃあ────」

　またしても霧響が悲鳴をあげようとしたので俺は咄嗟に止める。っていうかよくよく考えたらこの悲鳴で誰かがお風呂場に来る場合、同じ家の中にいる初音だ。そして、初音にこんなところを見られたら、俺の命は多分終わりだ。やばい、俺は今霧響に文字通り命を握られてるんだ。

「ま、待ってくれ、霧響、もっと他のことを──」

「お兄様は今自分が交渉できる立場にあると思ってるんですか？見てください、この状況を・・・こんな状況、誰が見ても欲求不満で妹に手を出した兄の構図じゃないですか、ああ、実際にそうなってくれたらいいんですけどね❤︎」

　そうだ、だから俺は何としても霧響の機嫌を損ねるわけにはいかないんだけど・・・それでも妹の裸を見るなんて、できるわけがない。

「わ、わかった、目を開ければいいんだな？」

「はい」

　俺はゆっくりと目を開けた。が、俺はすぐに首を回転させて、霧響とは逆方向を向く。

「ほら、目を開けたぞ」

「逆方向を見ていてはわからないので、こちらを見て目が開いているか確認させていただけますか？」

「は、はあ！？いやいや、わかるだろ！そ、そうだ、じゃあ今からこの壁に｀あいうえお｀って書くから、それでいいか？目を瞑りながらあいうえおって綺麗に書くのはなかなか至難の技だろ？」

「確かに難しいとは思いますが、さっきのお兄様の頑固さを見るあたり、それで済むのならと、全力で集中して｀あいうえお｀と書きそうなので、それなら無理なことはありません、それに、そんな面倒なことをせずともこちらを一度向けば終わることじゃないですか」

「っ・・・！」

「・・・ふふ」

　霧響、思った以上に本気だな。兄に裸を見せることに本気な妹ってなんかパワーワードすぎてやばいな。ここは兄として霧響の考え方を改めさせないと・・・！

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