第146話総明の妹

 俺の妹の名前は最王子(さいおうじ)霧響(きりね)。ちなみに俺の名前の由来はなんかとにかく全てを明るくできる子に育って欲しいみたいな理由らしくて、霧響は薄い霧でも濃い霧でも、どんな霧にでも響くような女の子に育って欲しいからっていう理由らしい。そして俺はその名前の由来の意味について俺の名前は適当すぎないかと両親に抗議したのを覚えている。

 そしてそんな名前を持つ俺の妹、霧響が今、俺の目の前にいる。が、霧響は俺に気づいていないようだ。階段の手すりに隠れてるからバレていないみたいだ。っていうか初音は上で何してるんだ?まあ、今来られても困るんだけどな。


「・・・?靴が二足?お母様とお父様は今家にいないはず・・・ということは、まさか!」


 と、霧響は階段の方に向かってきた。いや、別にバレてもなんの問題もないんだけど、なんとなく手すりにくっついてみる。が、そんなの意味があるはずもなく──


「やっぱり!お兄様!帰ってたんですね!」


 と、霧響は俺の方に抱きついてきた。・・・一見久しぶりに再開した中のいい兄弟に見える。が、こんなのは今だけだ。その内──


「さて・・・」


 と、霧響は仕切り直すと言わんばかりに空気感を変えると・・・


「なんて私にほとんど何も告げずに引っ越しなんてしたんですか、なんて私に何も相談しなかったんですか?」


 と、このように霧響はなぜか俺の全てを管理したがる。ヤンデレとは違う新ジャンルな感じだ。そして俺が叛逆しようとすると、初音とはまた違ったベクトルで怖くなる。から──


「はい、ごめんなさい」


 と、こんなことを言うしか俺にはできないのである。


「はあ、まあいいです、とにかく、ゴールデンウィーク中はずっとこっちにいてもらいますからね」


「う、嘘だろ!?」


「何言ってるんですか、本当ならずっと一緒に──こっちにいて欲しいんですよ?」


「えっ・・・な、なんでだ?」


「それは、私が・・・じゃなくてお兄様を管理するためです」


「ああ、そうですか・・・」


 でもまずいな、さすがにずっとこっちに残るのは初音に申し訳ないし、かといって初音に先に帰ってと言っても「え、なんで?もしかして浮気?」と言われるのがオチだろう。


「とにかく、お兄様は私と人生を共に──」


 と、霧響がその文面の後に言葉が続くと、どんな言葉でも怖くなりそうな不吉な文を遮られ流ように、俺の上をみた。それと同時に俺も階段の上を見てみる。と、そこにはとてつもない殺気を出している初音の姿があった。


「そーくん、その女誰?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る