第145話総明の前の家

「じゃあ、早速♪」


「ま、待て!」


 初音は俺の前の家のピンポンを躊躇なく押した。た、頼む!誰もいないでくれ・・・


「「・・・・・・」」


 特になんの反応もない。


「あれ?」


「あっ、あー、わ、悪い、完全に忘れてた、俺の両親はゴールデンウィークになると出かけるんだった・・・」


「えー、そーなの?」


 と、初音は若干落ち込んだ。


「なら仕方ないねー」


「・・・ん?」


 思ったよりも落ち込んでないな。もっと怒られる覚悟だったんだけど・・・


「まあ、いいや、じゃあ入ろ?」


「・・・え?」


「え?じゃないよ、一応自分の家なんだから鍵ぐらい持ってるでしょ?」


「それはまあ・・・」


「じゃあ、早く入ろ?」


「えっ、でも両親いないし──」


「入ろ?」


「・・・わかった」


 初音に圧に押され、俺はカバンから鍵を取り出し、家の鍵を開けた。そして俺が家の鍵を開けると同時に初音は容赦なく家の中に入った。


「お邪魔しまーす」


 そして俺もそれに続いて入ることにした。それにしてもこの玄関・・・懐かしいなあ。まあ、まだ引っ越してから一ヶ月しか経ってないけど。


「で、そーくんのお部屋はどこ?」


「ヘっ・・・?俺の部屋?」


 あんまり荷物持ってきてなかったからほとんどそのままだと思うけど、それがむしろまずいな。エロ本とかは買ってないけど可愛い女の子が表紙のラノベはめちゃくちゃ買ってたからもしそれが初音にバレたら・・・


「うん、どこ?」


「えーっと・・・」


 でも言わないっていうのも不自然すぎるし、言うしかないか。


「2階の一番手前だ」


「へー、2階建てなんだねー」


「ま、まあな・・・」


 そして初音はトントンとその軽い体を階段に運ばせてやがて2階についた。そして──


「ここがそーくんのお部屋?」


「そうだ」


 初音は俺の部屋の扉を躊躇なく開けた。すると、そこで俺は衝撃的なものを見ることになった。


「なっ!なんだよこれ・・・!」


 俺の部屋の床には大量に切り刻まれたラノベの表紙の女の子たちがいた。


「そーくん、私感激かも・・・」


「・・・え?」


「だって、浮気するまいと私のためにこの女たちを切り刻んでおいてくれたんでしょ?」


「違う、っていうかこれは俺が切り刻んだわけじゃ──」


 と、俺が否定しようとした時、家中にとある音が鳴り響いた。


`ガチャ`


 そう、鍵が開く音だ。どこの家にでもある音。その音は不思議と人の耳によく聞こえる。


「だ、誰だ・・・?」


 俺は階段を降りた。その瞬間、俺は息をのんだ。なぜなら、その玄関には妹の姿があったからだ。

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