第122話初音オリジナル作品

 そしてそれからしばらくして初音から声がかかった。




「そーくん、この中だとどれがいい?」




 そう言うと、初音はプリントアウトされた紙を3枚を俺の前に出した。どうやらその劇の企画書的なつらしい。そしてそのうちの一つに目を通してみると──




「ロミオとジュリエット…?」




 なんだ、もっと変な感じでくるかと思ったら意外と王道だな。そんなことを考えながらキャスティングのランを見てみると俺がロミオ役で初音がジュリエット役になっていた。




「ちょっと待て!なんで俺がロミオなんだ!?」




「なんでって、むしろそーくん以外に適任がいないでしょ?」




「いやいや!そんなことないだろ!それに──」




 俺がさらに下の欄に目を通すと設定が元のロミオとジュリエットとが全く違う。元のロミオとジュリエットは悲哀系だったけど、この初音のロミオとジュリエットはただただロミオとジュリエットがいちゃいちゃているだけだ。こんなの誰が見たいんだ…




「本来のロミオtジュリエットと内容が全然違うだろ!」




「オリジナルって大事だと思わない?」




「思うけどこんなただいちゃいちゃしているだけのロミオとジュリエットなんて見たいんだ!」




「…そうだよね、ごめん、私たちの恋は見世物なんかじゃないもんね、って言うかもし私たちの恋路をもし誰かが見てるんだとしたらそんなストーカーみたいなやつ私が──」




「わ、分かったから、落ち着けって…」




 とりあえずこれについてはなんとか承諾してくれそうだ。って言うかそもそも俺が主役なんて無理に決まってるだろ。そのぐらいは頭いいんだから考えて欲しい。




「次は────浦島太郎…?」




 これまたタイトルだけ見れば普通だけど内容はどうやら…俺は不安を胸にキャスティングを見てみると案の定俺が浦島太郎役で初音は竜宮城の女の人の役らしい。




「だから俺に主役なんて──」




 初音にこれを言っても仕方ないか。俺は諦観を抱きつつ内容を見てみるとこれまたびっくりした。初音オリジナルの浦島太郎の内容は一生竜宮城で過ごし、ひたすら初音が演じる女の子とひたすらいちゃいちゃするといった内容だった。




「おいおい、またして──」




「ごめん、それも見世物みたいになっちゃうね…でも次は大丈夫だから!」




「…ほんとか?」




 俺は疑いの眼差しを初音に向けつつ次の作品のタイトルに目を向けてみた。




「えーっと、タイトルが…?裸の浮気王子様…?」




「……」




「……」




 えーっと、これの元は多分裸の王様。か?って言うか浮気王子様って…主演の欄を見てみると相変わらず俺が主演になっていた。…これなんて童話?


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