第65話総明の何度目かの浮気疑惑
俺はとりあえず急いで自分の家に帰ることにした。それも当然だ、何が悲しくて祝日の朝から制服で街中を徘徊しないといけないんだ。俺はすぐに自分の家の扉の前まで来て、扉を開けようとする。・・・が、
ガチャン
「・・・は?」
なぜか中から鍵がかけられていて家に入ることができない。・・・勘弁してくれ、さっき喫茶店で飲み物を飲むだけ飲んで恥ずかしさから急いで帰って来たからこっちはトイレを我慢したままなんだ・・・
俺はすぐにインターホンを鳴らした。すると、すぐに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そーくん?なんでさっき制服で外にいたの?しかも、もう9時過ぎだよ?」
も、もうそんなに時間が経ってたのか・・・っていうかなんか初音の声がだいぶ低い。
「いや、今日が祝日だって言うのを忘れてて・・・」
「何その言い訳、本当は学校で告白でもされてたんじゃないの?」
「は、はあ!?そんなわけないだろ!いいから、早くっ・・・開けてくれ」
お、俺の膀胱はもう限界に近い。
「何苦しそうにしてるの?まさか、本当に・・・」
「いや、そうじゃなくて、トイレにーー」
「言い訳なんか聞きたくないんだけど、正直に言ったら一週間私の「好きだよ」っていう録音を聞かせるだけで許してあげるから、ほら、言って?」
いや、正直に言ってもその程度なのか・・・っていうか浮気なんてしてない。でもそんなこと、ではないけど今はそんな事よりいち早くトイレに行きたい。さすがに失禁したくはない。
「いつもそんなこと言ってるけど実際に俺が浮気したことなんてないだろ?だから早く扉をーーーー」
「何それ・・・」
「あっ・・・」
トイレに行きたいが故に俺は命を危険にさらしてしまったかもしれない。人間は極限状態になると判断力を失うと言うがそれは本当だったらしい。俺がその体現者だ。
「私が優しさでそーくんを心配して気にかけてるのに・・・」
「あっ、いや、ごめん」
俺は素直に謝る。・・・いや、常識的に見たらここで謝るのはおかしいのかもしれないけどこれはもう仕方ない。これ以上何か反論して初音がさらに怒りだしたら俺は本当に終わる。
「いや、ごめんじゃなくて、他に言葉知らないの?」
「いやっ・・・ごめん」
実際にこんな状況になったらごめんしか言葉が出ない。しかも初音がこれまでにないほど怒ってる。もしかして俺の勘違いから始まってそのせいで俺今日命日になったりするのか?だとしたら死因がダサすぎる。
「いや、だからごめんじゃなくて・・・まさかちょっと目を話しただけでこんな大事になるなんて、やっぱり私がいないとそーくんは何もできないんだね♪」
「あ、ああ・・・」
なんでそこでテンションが上がってるのかは知らないが、俺としては早くトイレをしたいのでとりあえず乗っかることにした。
「そっかそっかあ、まあ、そんなそーくんなら祝日を平日と間違えちゃうかー♪」
「そ、そうなんだ、だから早くこの扉をーーーー」
「でも、私がいないと何もできないってことは、ちゃんと躾ーーっていうか教育は私がしないとだめだよね?」
「・・・教、育?」
そういうと、初音は画面越しでもわかるくらいに「ふふっ♥」と笑った・・・
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