第19話初音による監禁①

 ・・・な、なんでここに初音が?いや、それはこの教室で俺が待っていると思ったからか。じゃあ、今の質問の意味は?あの女って誰だ?いや、今ここに初音がいるとしたらさっき教室を出て行った月愛以外には考えられない。じゃあ、何を話してたの?の質問の意味は?もしかして、浮気を疑われた?


 ・・・いや、落ち着け、まずは話を聞こう。




「え、何を話してたって、どういう意味?」




「だって、教室にはそーくんとあの女の二人だけだったんでしょ?」




「いや、特に大した話はーーーー」




「昼様子がおかしかったのは、やっぱりあの女のせいだったんだね」




「え?」




 初音は悲し気に、そして儚げに、そして決心を決めた顔をした。




「私言ったよね?隠し事したらどうなるかわかってるよねって」




「い、いや、べ、別に隠してたわけじゃーーーー」




「もういいよ、そーくん、ちょっと眠ってて」




 そういうと、初音は俺の懐まで近づいてきて、注射器のようなものを制服のポケットから取り出し、それを俺の手の甲に注入した。・・・急激な眠気が襲ってくる。こ、これは、睡眠薬・・・?




「な、なにを・・・・・・」




「大丈夫、ちょっとそーくんには反省してもらうだけだからーーーー」




 その言葉を最後に俺は意識を失った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・くん、・・・ーくん、そーくん!」




「はっ!」




 俺は目を覚まし、すぐに状況の確認をしようとした、が。




「あ、あへ・・・?」




 目が見えない、いや、目を何かで隠されている、目隠しか・・・、っていうか口もなんか拘束されてる。




「あっ、そーくん起きた?もう、お寝坊さんだね♥」




 と、いつもの軽口を初音はたたいている。っていうか、体も何かに縛られてるんだけど・・・これは、椅子か・・・?そして縄のようなもので椅子に括り付けられていると・・・


 つまり、今の状況をまとめてみると、口を塞がれ助けを呼べず、目隠しをされているので状況把握も思うようにできず、椅子に縄で括り付けられているので身動きすらできない。




 ・・・うん、これはまさしく監禁だな。




「ひゃ、ひゃんでほんはほほを?」(な、なんでこんなことを?)




「ああごめん、、すぐに口の拘束を解くね?」




 そういうと、初音は宣言通り俺の口の拘束を解いた。




「はあっ、はあっ、な、なんでこんなことを?」




「だって、そーくんが浮気したんだもん、だから一週間だけ監禁しようと思って♥」




「か、監禁・・・」




 やっぱりそういうことか・・・




「あっ!そうだ、つぶやかないと!!」




 と、言うと何か、スマホの文字を入力する時の効果音が聞こえてくる。




「彼氏監禁なう♥っと」




 ・・・はい?なにそのやばいつぶやき、そんなの誰がーーーー




「ああ、いいね1万かあ、今日はちょっと少ないなあ」




 ・・・え?一万?今あげてからまだ5秒も経ってないのに?しかもそれで少ない・・・?もしかして、初音ってSNSでものすごい権力を持ってるとか?い、いや、とにかく今はこの状況を脱しない・・・




「は、初音?ご、誤解だって、俺はーーーー」




「別に浮気なんてしてない!お願いだ!信じてくれ!・・・でしょ?」




「えっ・・・・・・」




 初音に俺が言おうとしていたことを完全に読まれた。




「そんなの浮気してる人の常套句だよ?」




「い、いや、でも本当のことだし・・・」




 どうしよう、俺の頭の中にはいくつか誤解を解くための文章が浮かんでるけど、それもすべて「浮気する人はそういう」で、片付けられてしまったら本当にどうしようもない。




「ごめんね、でもそーくんをこれ以上浮気させないためにも懲らしめておかないといけないんだ、でも、これで懲りてくれたらもう浮気なんてしようなんて思わないでしょ?」




「ええ・・・」




「私だって、悲しくて辛いんだよ?そーくんが浮気してたー、なんてさ?」




 そんな勝手に悲しそうな感じ出されても俺は本当に浮気なんてしてないんだけど・・・




「まあ、今日はもう遅いし、私はもう寝るけど、そーくんは寝ててね!」




「えっ!ちょっと待っーーーー」




バタン




 この部屋の扉らしきものが閉じたのが聞こえた。・・・え、嘘だろ?俺今起きたばっかりだから全然眠くないんだけど?俺が眠らされたのが夜6時ぐらい、そしてそれからどのくらい眠っていたのかわからないけど遅い時間って言っていたから12時ぐらいと仮定しておこう。


 ・・・眠れる自信がない。そして、睡眠のことよりも水が欲しい。喉が渇いた・・・




「は、初音!水!!」




「・・・・・・」




 返答はない、もうこの部屋にはもう本当にいないようだった。




「・・・はあ、今日は長い夜になりそうだ」

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