第17話無愛想な女の子
昨日初音が意味の分からに事を言い始めて、一夜が過ぎた。
今日は学生なら誰もが嫌悪する、何の罪もないけどおそらく一番嫌われている曜日、月曜日だ。学生は学校に行き、社会人は仕事をはじめ、サンタさんは寝る。
いつも思う、なんで365日のうち364日も寝ているような奴が子供の夢になれるのかと。俺だって年に一年働くだけで夢と希望なんて大それたものになれるのならなってみたい。
そんなひねくれた考えを頭に抱きながら初音と一緒に登校した。今日、初音はなぜかものすごく機嫌がいい。なんでだろう・・・
わからないけど、俺たちは学校の中に入り、教室の中に入った。が、初音がすぐに話しかけてきた。
「ごめん、そーくん、ちょっと今日生徒会の仕事があるから、生徒会室に行かないといけないの・・・」
「そうなんだ、わかった」
そして、初音は宣言通り教室を後にして、どこかに向かった。
「・・・・・・」
ここ数日、初音と一緒にいたから他の誰かと話せていない。しかも、俺は初音がいないと転校生ということもあり完全にぼっちだ。すでにクラスにはグループが確立されつつある。
まあ、別に一人で困ることも無いんだけど、やっぱり暇だ。俺は俺と同じように一人の人を探してみるも、やっぱり二年目ということもあって、そんな人は一人も・・・
「ん?」
俺の席の二つ前に一人で読書をしている女の子がいた。・・・話しかけてみようかな、いや、でも・・・
「どうしよう」
俺が悩んでいる理由は思春期の男子が女子に話しかけるのを恥ずかしがる、なんていう話じゃない。いや!そんなものと同価値に扱われたくない!こっちは命懸けなんだ!
で、でもこのまま初音以外と接しないというのもさすがに学校生活で困るよな・・・
「話しかけてみるか」
そして俺は二つ前の席まで移動し、その女の子に話しかけてみた。
「あ、あの・・・」
「何?」
その子はこちらに一瞬顔を向けた。・・・ん?どこかで見た顔だ。この長いサラサラな黒髪、この細い体・・・あ!思い出した!
部活選択の時に職員室の場所を教えてくれた人だ!
「あ、あの時はごめん!でも、ありがとう」
「あの時・・・?ああ、あの時の、いいわよ、全然気にしてないから」
「あ、そ、そう?」
「・・・それだけのために話しかけてきたの?」
「あー、いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「じゃあ、何?」
なんていうかちょっと失礼かもしれないけど無愛想な人だな、人を寄せ付けないというか、だから一人で読書をしていたんだろうか。
・・・何のために話しかけてきたのかと言われると、返答に困るな。・・・ん?
「それ、ラノベ?」
「そ、そうだけど?」
・・・えっ、ブックカバーで気づかなかったけど、これ思いっきりラノベだ!ちょうと挿絵があるページで止まっている。この絵、どこかで・・・
「あっ!それ、『愛おしい彼を』ーーーー」
「そうだけど!声が大きい!!」
どうやら自分がラノベを呼んでいるというのを知られたくないらしい。まあ、そうか。一見ものすごく難しそうな小説を読んでいるように見える。だから僕は話しかけ損ねたんだけど・・・
「なんだ!こんなことなら気軽に話しかけておけばよかった!」
俺は笑顔を向ける。
「・・・な、なによ、も、もう、HR始まるわよ?」
「あー、ごめん」
そして俺はそろそろHRが始まりそうだったので席に着いた。そして、俺が席についてからしばらくして、俺の隣の席に初音が戻って来た。
「ごめんね、そーくん、一人にして!もう私がいるから安心してね!」
「あ、う、うん」
一人じゃなかったから寂しくはなかったよ、なんてことを言ったら間違いなく俺は刺されるだろう。
「・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
一瞬あの子が俺のことを見た気がするけど、気のせいだろうか。
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