第16話俺はダメ人間にはなりたくない
・・・このままじゃダメだ。俺はダメ人間になってしまう。料理や洗濯などの家事をすべて初音にやらせていて、俺はと言えば小説読んだりゲームしたり、たまに勉強したりしてるぐらいで何もしていない。
今日は休日最後の日曜日、学生が月曜日が来る恐れを感じる日だ。でも、今俺は月曜日が来る恐れよりもダメ人間になることの方が怖い!せめて、料理ぐらいは俺がやりたい!
そう思いいたった俺はキッチンにいる初音に申し出ることにした。
「なあ、初音、今日俺が料理してみてもいい・・・かな?」
ちょっと怖くなったので最後一瞬声が抜けてしまった。何せ、今は初音が料理をしている最中、つまり包丁を持っているからだ。何か変なことを言うと・・・考えるだけでもおぞましい。
「えー?急にどうしたの?」
そんな俺の考えなどつゆ知らず、初音は聞き返してくる。そして俺もまたーー
「いや、だってこのまま全部初音に任せてたら俺ダメ人間になっちゃいそうだし・・・」
「あー、そんなこと?気にしなくていいよ、そーくんが何もできなくなっても一生私が養ってあげるから」
そんなことになりたくないから俺は自分で何かしたいんだけど・・・
「いや、でもそれじゃーーーー」
「なに?もしかして他に女がいてその人のために料理練習したいってこと?」
「えっ・・・・・・」
初音が絶対に包丁を持たせてはいけない人の顔をしている。
「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「じゃあ、家事とかは全部任せておとなしくしてて」
「で、でもーーーー」
「あ、ならいっぞ動けないように手足ーーーー」
「部屋に戻ります!」
初音がなにか怖いことを言おうとしているのがすぐにわかったので、俺はおとなしく自分の部屋に戻ることにした。のだが、遠くから初音が大声で話しかけてくる。
「あ!でも、洗濯はしてくれたら嬉しいなー!!!!」
と、キッチンからかなりの声で聞こえてきた。洗濯はしていいのか。なら、せめて洗濯だけでもしよう!
そして俺は洗濯機の前までくると、洗濯かごの中にあったものを一つ一つ洗濯機の中に入れていく。そして、俺の手はあるものを手に取った瞬間に止まってしまった。
「こ、これって・・・」
そう、完全に初音の下着を、俺は今まさに手に取っていた。
「う、うわあっ!」
驚いた俺は初音の下着を下に落としてしまった。そして後ろから初音の声が聞こえる。
「ふふっ、引っかかってくれたんだね♪どう?私の下着、脱ぎたてほやほやだよ?」
「いらない!くう・・・俺をはめるために洗濯をやらせようとしてたのか・・・」
俺は自分が初音にいいように弄ばれていることに気付き、今度こそ自分の部屋でおとなしく初音が作ってくれる料理を待つことにした。
「ふふ、これでもう何かしようとはしないよね♪」
ー10分後ー
「はーい、そーくん、できたよー♪」
そう言いながら俺の部屋の扉を開け、初音はカレーライスを持ってきてくれた。
「ありがとう、初音」
「ううん、いっぱい食べてね!」
そして俺たちは初音が作ってくれたカレーライスを一緒に美味しく食べた。
「・・・・・・」
そういえば少し気になっていることがある。
「なあ、初音」
「ん?どーしたの?」
「初音の部屋ってどんな感じなんだ?」
「え、そんなに私のこと知りたいの?もうエッチ♥でもだーめ、秘密だよ」
「そ、そんなつもりじゃないけど・・・」
そう、初音が俺の部屋に来ることがあっても俺が初音の部屋に行くことはないため、どんな感じの部屋なのかわからない。まあ、多分普通の女の子って感じの部屋だとは思う・・・ぬいぐるみ部屋的な?
「そういえば、そーくん」
「ん?」
いきなり真面目な声になっている初音に少し驚く。
「ちょっと提案なんだけどさ、生徒会に入らない?」
「生徒会・・・?」
「うん」
そういえば七海先生が言ってたな、初音は生徒会副会長だって。まあ、俺のことを生徒会に勧誘しても仕方ないか。
「でも、俺には生徒会なんてーー」
「できるよ!一緒に仕事したりするのも楽しいと思うんだけど・・・だめ?」
「うっ・・・」
そんな上目遣いで見られると・・・いや、でも待てよ?
「でも、生徒会って多数決だろ?俺なんか転校生でなんの人気もーー」
「ああ、大丈夫、それは私の奴隷ーー私一応生徒会副会長で支持率も高いし、私が推薦したら絶対に入れるよ!」
今、奴隷って言わなかった?気のせいか?
「ちなみに、もし俺が生徒会に入ることになったらなんの役職になるんだ?」
「生徒会副会長癒し係」
「・・・・・・は?」
それこそダメ人間の職業なのでは・・・?俺は笑いながら誤魔化し、なんとかその場を乗り切った。
・・・冗談、だよな?
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