第14話初音と買い物
今日は土曜日だ、昨日は特に何も音沙汰はなかった。部活選択の件についてもっといろいろ何か言われるかなあ、と思っていたけど、特に何もなかった。
いや、むしろ‘静かすぎ‘た。いつもの初音なら何かしらの行動は起こす。でもそれが何もなかったのは、多分今日のフィギュア安全条件付きの買い物が何か関係しているんだろう。
「はあ・・・」
何を企んでいるのか知らないが、今更断るわけにもいかない。でも、まあ初音との買い物で気を付けなければいけないことは二つだ。
一つは初音以外の女性と話したりもせず、目移りなどもしないこと。まあ、これは割と普通なんじゃないかと思う、誰だって出かけている最中に他の人に目移りをしてほしくはないだろう。
そしてもう一つは絶対に初音を‘否定‘しないこと。これだけはもう絶対厳守しなければならない。過去に一度「あの恋愛映画観たいなあ」と、言っていた映画が彼女が浮気した彼氏に復讐する、といったかなりホラーな内容だったので「いや、あっちの映画も良くない?」と、俺が否定というか提案をしただけで「え?私の見たい映画をそーくんが見たくないわけないよね?」と、思いのほか真面目な顔で言われてしまい、それ以降俺は基本的には初音を否定することはやめた。
俺は今自分の家、と言っていいのかわからないけど、俺たちが同棲している家から2駅で着く所、大司駅に来ている。ここはかなりの大都会で特に若い人を中心に人口が多い。
そして俺はそんな大都会の駅の前で初音を待っている。それにしても・・・
「なんで同じ家なのにこんな待ち合わせなんて・・・」
そう、同じ家なのになぜか待ち合わせ形式というかなり意味不明なことをしている。初音曰く「待ち合わせの方が雰囲気でるからいーの!」とのことらしい。そういうもんなのか・・・?
そしてしばらくして・・・
「そーくん、ごめん、待ったー?」
と、後ろから聞き慣れた声がした。振り返るとその声の主はやっぱり初音で肩の部分だけが空いていて薄い白生地の色をした服に、水色のこれまた透明感を感じるかなり長いスカートを着ていた。
「ううん、5分ぐらいだから気にしないで」
「むっ、そこは「俺も今来たー」とかいうところだよ?」
「あ、俺も今来たー」
「もう遅い!!」
と、若干怒りながらもどこか笑顔な初音につられて俺も笑う。すると初音が‘待ち合わせ‘の時の常套句を言ってきた。
「この服、似合ってる?」
「ああ、可愛いよ」
「本当!?嬉しい!」
これは即答できる。初音は可愛い。
「じゃあ、行こ!」
「うん、それはいいけどどこに行くの?」
「お洋服屋さん!」
なるほど、初音は何でも言うことを聞くという条件で俺と洋服店に行きたかったのか・・・でも洋服店になんでも言うことを聞かせられることを使うか?まあ、俺としては特に何も問題は起きなさそうで嬉しいけど・・・
そんな俺の考えも約10分後には砕け散っていた。
「はい!ここだよ!!」
「えっ・・・ここ?」
そこは・・・なんというか別に直接的に書いてるわけじゃないけど、明らかに男性が入ってはいけないようなお店で女性ものの下着などを主に売っているお店だった。
「え、さすがにここは・・・」
「‘なんでも‘!だよね!!」
「・・・・・・はい」
なるほど・・・俺は基本的にはこういう大人なお店というか、そういうところには来たことがなかったし、初音といるときも初音に「下着選んで!」と言われても絶対に「そういうのは自分で選んで!」とそれだけは否定していた。
でも、今回のなんでも券はそんなものを容易く覆せる。・・・どうする、今からやっぱりあの話無し!とか言ってみるか?いや、そうなったら俺のフィギュアどころか色々と危ないかもしれない。
しかも、もしあのフィギュアたちをなくしてしまうと、俺はもう二度と女の子のフィギュアを家に飾ることができないだろう。それはなんか困る・・・
俺がそんなことをわかっているのかどうかは知らないけど、初音が明るい声で質問してくる。
「この下着とこの下着どっちがいいと思う?」
そう言いながら俺の前に純白の下着と黒紫色の下着を見せてきた。見るだけでも恥ずかしい・・・
「そ、そんなの選べるわけーーーー」
「‘なんでも‘だよね?」
「うっ・・・・・・」
あの時の軽率な発言がここにきて俺のメンタルを削いでいる。まあ、あの状況ではああするしかなかったし、今でもそれが間違いではなかったと思うけど、間違いじゃなかっただけでその回答が幸せな者かはまた別の話だ。
それでも俺は白か黒かを回答しなければならない。こうなったらやけだ!
「・・・白」
「おっけー!じゃあ次はブラジャー持ってくるねー」
そういうと、初音は手にしていたかごに純白の下着を入れ、黒の下着を元あった場所に戻し、ブラジャーを手に取って俺の所まで戻って来た。
「じゃあ、次はーーーー」
・・・それから20着・・・約1時間ほど選ばされ続けた。もう、殺してくれ・・・
「そーくんが下着を選んでくれるなんて夢みたいだよー!ありがとー!」
「ああ、うん・・・」
本当に夢だったらよかったよ・・・周りの視線もだいぶ痛かった。
「でもまだまだ時間あるし、せっかくだからもうちょっと遊んでいかない?」
「うん、いいよ」
そして俺と初音はこの前言っていたリビングの家具を少し見て回り、特にピンとくるものも無かったので、家に帰ることにした。
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