第30話 羅刹あいはイチャイチャしたい

 ある日の午後――――

 春近は、今後の事を考えながら廊下を歩いていた。

 特級指定転生者をとりこにしろと言われているが、自分にはその自信が無い。

 先日の件もあり、大嶽渚とトラブルになりそうで気が引けている。


 実はすでに二人は殆ど落ちて……いや堕ちているのだが、春近はまだ気付いていなかった――――

 

「ゴールデンウィークか……」

 春近が呟く。


 ルリから、ゴールデンウィークに遊びに行きたいと誘われているけど――

 何処に行こうかな?

 そもそも、この学園って外泊許可とか出るのか?

 陰陽庁長官が変わったから大丈夫なのかな?

 

「何がゴールデンウィークなの?」

 いきなり現れた女子につかまれて声をかけられた。


「あいちゃん!」

 抱きついた羅刹あいは、春近の首に腕を回し引き寄せてくる。


「わっ、胸が!」

 大きくて柔らかい胸が顔に当たり、春近が声を上げた。


「わざとだから気にしないで良いよぉ」


 春近は彼女に引きずられて連れて行かれた――――



 屋上――――


「ここなら誰もいないよぉ」


 屋上に連れ込まれ、回した腕に力が入り二人は密着する形になった。


「ねぇ、ゴールデンウィークとか言ってたけど、どっか行くの?」

 抱きついたまま至近距離であいが囁く。


「あ、旅行とか……」

「いいね! うちも行きたーい!」

「でも、ルリ達と行く予定なので……」

「えぇー いいじゃん! うちらも行くー 渚っちも連れてくし」


 ルリと渚を会せたら、またケンカになりそうな気がする。

 二人が仲良くなれば問題は解決なのだが、いきなり一緒に旅行に行って余計に険悪になると元も子もない。


「あの子も、ちょっと大人しくなったから大丈夫だよー」

「本当に大丈夫なんだろうか……」

「大丈夫だよぉ」


 先ず、ルリ達に聞かないとならないと春近が思うが、この二人なら強引に付いてきそうな気もする。


「それよりぃ……はるっちってさー 美味しそうだよねぇ~」


 あいは、もう一方の腕も回して、ピッタリと抱きつく恰好になった。

 更に両足も回して完全にロックされる。

 彼女のムチムチした健康的で艶やかな褐色の肌が体のアチコチに密着し、春近は変な気持ちになってしまう。


 むぎゅー

「ちょっ、動けない……」


 凄い腕力で全く動けない。


「怖がらなくてもいいよー 優しくするしー」


 ちろちろちろ――――

「うぁ、くすぐったい!」


 耳を舐められ、春近がビクビクと体を震わせた。


「もぉ、そんなにビクビクしちゃって、かわいい~」


 ニマニマした表情のあいが、舌を耳に入れてチロチロさせながら、指先を優しく体中に走らせてくりくりとイジってくる。


「ほらぁ、うちらも連れていってくんないとぉ、もっと凄い事しちゃうよぉー」


 舌も指も凄いテクニックで、弱点を攻めまくってくる。

 耳から首筋に熱い吐息といきがかかり、頭の中がトロトロにされていくような感覚だ。


「どう? 連れてきたくなった?」

「そ、それは……」

「ふぅーん、口ではそんな事いっても、こっちはこんなんなってんですけどー」


 彼女の手が下がり、熱くなっている体をコチョコチョされる。


「わぁぁぁぁぁー! 分かりました! 連れていきます!」

 あっさり陥落させられてしまった。


「やったー!」


「どうしよう……ルリ達に伝えたら凄く怒りそう」




 自室でくつろぐ大嶽渚のスマホにメールが届いた。

 アプリを開くと、羅刹あいからの衝撃的急展開の文面が飛び込んでくる。


 ――――ゴールデンウィークに、はるっちと旅行に行くから、予定空けといてね――――


「なによ、これ!」

 突然の事に大声が出る。


 いや、これは好都合だ。

 旅行先で、あの男を攻め落として手に入れてやると渚が意気込む。



 怒涛のゴールデンウィーク編が始まろうとしていた――――


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