陰陽学園の鬼神嫁 ~愛が激しい美少女たちを助けたら、全員から溺愛(一部ヤンデレ)されまくり、十二天将を従える王になる物語~

みなもと十華@書籍化決定

第一章 鬼の少女達

第1話 出会い

 永万元年 鬼ヶ島――――


 大海へと舟を漕ぎ出そうとした男が口を開く。


「我らならば心配は要らぬ。いつか必ず島に戻って来る。その時は、また一緒に暮らそうぞ」


 青い、果てしなく青い水平線の向こうへと漕ぎ出したその男が笑う。


「そうじゃ! 我らが再び戻った時は、共に国を作るのはどうじゃ? 誰もが心穏やかに暮らせる極楽浄土のような国を!」


 最後に、そう言い残した者たちは、青い水平線の向こうに消えて行った。

 島に残った皆は、いつまでも見つめていた。遥かに遠い海の向こうを。



 それから幾星霜いくせいそう――――

 少女はつぶやく。


『もし本当に、悲しみや差別や争いの無い、そんな世界があったとしたら……。そこでは穏やかな愛の暮らしができるのだとしたら。私は――――』


 ――――――――――――――――




 やわらかな春風で桜の花びらが舞い、街行く人も心なしか陽気にみえる季節の中を歩く男がいた。

 駅の改札を出たその若者は、何度目かのため息をつく。


「はぁ……気が重いな……」


 土御門つちみかど春近はるちかは、やんごとなき理由により実家を離れ全寮制の私立陰陽学園しりつおんみょうがくえんへと入学する事になったのだった。


 身長は普通くらいだろうか。

 特徴といったら、お人好しそうな雰囲気を漂わせた目立たない印象をしていることくらいだろう。

 老人に道を聞かれるような若者といえば聞こえがいいが、違った例えをするとお人好しとかヤカラに絡まれそうといった感じだ。

 なにやら平安時代の陰陽師のような大層な苗字をしているが、本人はごく普通の男である。


 こんな事になったのは本人が関与できない家庭の事情なのだ。原因を作った本家の祖父からは詳しい説明は追って連絡するという事で、先に荷物を送り本人は電車を乗り継ぎ最寄りの駅まで来たのだった。


 噂に聞くところによると陰陽学園とは、魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこする弱肉強食の世界だという。(別名、ヤンチャな生徒が多い学校ともいう)


「いったいどんな学園なんだよ。そもそも、やんごとなき・・・・・・って何だよ」


 春近は、やんごとなき・・・・・・にツッコみを入れる。


「ただでさえヤンチャな女子に絡まれる事が多いのに、そんな学園に入ったらどうなっちゃうんだよ……。オレは静かに平和な暮らしがしたいだけなのに。そう、優しくて可愛い彼女とラブラブなスローライフみたいな?」


 文句を言っても仕方がない。

 春近は、顔を上げ駅前の時計に目をやる。


「そろそろ行かないと……」


 ふと、春近が上げたその視線の先に、信じられないような鮮烈な映像が入ってきた。

 それは、今まで味わった事のない強烈な衝撃だ。一瞬で脳を震わせ、その甘美とも呼べる衝撃が身体の芯まで伝わって一歩も動けないほどである。


 視線の先にには一人の少女が立っていた。


 制服を着たその少女は、まるで紅玉ルビーのように美しく燃えるような赤みがかった髪を風に揺らていた。大きく美しい吸い込まれそうな目には、宝石のような瑠璃色るりいろの瞳がきらめいている。


 背が高くすらりとした魅惑的なプロポーションだ。制服を内側から持ち上げるように膨らんだ大きな胸。くびれたウエストからはムチッとしたヒップ。短いスカートからは艶めかしく肉感的に伸びた脚が眩しい。


 ただそこに立っているだけで空間を捻じ曲げるような存在感を放っている。


 街行く男性は皆視線を釘付けにされていた。


「なんだ……あれ……?」


 春近は少女から目が離せなくなっている。


 街行く男性の視線を集めているのは理解できた。その場に存在しているだけで現実なのか夢なのか分からなくなるような、一種妖艶なこの世のものとは思えない雰囲気を漂わせているのだから。


 ――――サキュバスが現実に存在したら、あんな感じなのだろうか。


 そんな事を春近は思っていると――ふと、少女と目が合う。


 その瑠璃色の綺麗な瞳に吸い込まれそうな感覚を春近は覚えた。

 美しく魅惑的で妖艶な女。しかし、その体から溢れる雰囲気は、何故か人ならざる存在感を感じるような。目を離せない強烈な力を感じるような。そんな気がした。


 少女は、その場から駆け出しこちらに向かって来る。


 春近は、少女をガン見しているのがバレたのだと動揺する。と、同時に、その魅惑的な少女が、何か不可思議な力で自分を絡めとっているような感覚でゾクゾクと震えた。



(マズい、ジロジロ見ていたのがバレたのか)


 春近の脳内で緊急警報のようなものが鳴り響く。

 この少女はヤバい! 関わってはいけないと! その妖艶で鮮烈な少女に目を奪われながらも、関わるととんでもないトラブルに巻き込まれそうな危険信号が鳴り響いている。

 そう思いながらも、何故か少女から一瞬も目が離せない。まるで運命の歯車が嚙み合ってしまったかのように。


「あの~その制服……陰陽学園の生徒ですよね」


 少女が春近に話しかける。


 なにやら間の抜けたような声をかけられ、緊張していた春近は警戒感を解いた。


「は、はい……この春から入学します」


 春近は少女に見惚れたまま答える。


「よかったぁ、私もなんですが道が分からなくて。一緒に行きませんか?」


「はい……」


 春近は、その美しい少女の吸い込まれそうな瞳と心地良く響く声に誘われるがままに、まるで魂を掴まれてしまったが如く無防備に返事を返してしまう。


 それが、この少女――酒吞しゅてん瑠璃るりとの出会いだった。


 この出会いが学園を取り巻く陰謀や策略に巻き込まれてゆき、更に何故か伝説級最強の鬼の能力を持つ美少女たちからモテモテになるのだが、この時の春近には知る由も無かった。


 少女の目に見つめられ声を聞いた時に、まるで何かの魔法にかかったように最初に感じた警戒感は消失してしまったのだから。

 その少女が異様な空間現象を起こしている事など、すっかり忘れていたのだ。








 ――――――――――――――――――――

 この物語は、主人公の少年が鬼の血筋という特殊な力を持つ個性的な少女たちと仲良くなり、ちょっとエッチで過激なヒロインや少しだけドSなヒロインに攻められて、時に激しく時に優しくたまに感動して愛を深めてゆく物語です。


 ラブコメ多めですが、超強力な呪力や魔法のバトルもあります。

 そして、生まれ持った力により辛い過去を持つ全てのヒロインに、幸せになってもらいたいという想いでハッピーエンドに向け書いています。

 皆様に楽しんで頂けたら幸いです。


 もし少しでも面白いとかヒロイン可愛いと思っていただけたら、フォローや★など頂けると嬉しいです。

 星は三つでも一つでも思った通りに入れていただいて構いません。

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