星芒
卯月 叶天
星の話
僕には、彼女がいた。
この前、彼女が突然
「ねえ、星を見に行こうよ」
と、言ってきた。
星なんて、こんな明るい街中では見えないじゃないか。
僕はそう思いつつも、子どものように目を輝かせる彼女には逆らえず、一緒に見に行くことになった。
彼女に連れてこられたのは、街の外れにある小さな古いプラネタリウムだった。
だけど、そこで見た満天の星空は広く、どこまでも続いていた。僕はその光景が頭から離れなかった。人工の空とは思えないほど、美しかった。
帰り道に空を見上げても、星なんてやっぱり見えなかった。
一瞬、視界の隅で何かが瞬いた。空は暗いままだった。
今日もまた、星を見に来た。
あの日と同じ場所で、僕たちは人工の空を見上げた。
君の目に映る星は一段と輝いていた。一筋、又一筋と星が頬を伝い
そして、消えていった。
君は、泣いていた。僕が隣にいるのにも気づいてくれなかった。
ああ、そっか。そうだった。
僕は、星になったんだっけ。
星芒 卯月 叶天 @toadayo_
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