#2 A fateful encounter 2 ~運命の出会い 2~
突如として上空から飛来した何かが地面に突き刺さった事により土煙が舞い上がり視界に捉えていた黒い影が姿を見失った。
それにより黒い影との何かが途切れたのか静寂が支配する空間のなかでどうにか目線だけ動かせる様になり、辺りを見ると今まで居た街の人たちがどういうわけか消えてしまっている事に気がついた。
——なんだ!?なにが起こったんだ!?——
風に流され土煙が晴れ、目線を動かしながら周囲の様子を見ていると背後から誰かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえた。
——……誰か来る!?——
未だに視線以外を動かす事ができない中でどうにか視界の端にその姿を捉えようと目線を音がする方向へ向ける。
直後僕の横を長い金髪に翡翠の瞳、黒いロングコート着た女性が静かに通り過ぎた。
通り過ぎる際に一瞬こっちを一瞥すると、その女性は地面に突き刺さったモノをに手を掛け軽やかに引き抜き、そこで刺さっていたものが槍だとわかった。
「––––––––……ッチ。また逃げたか」
舌打ちをする金髪の女性は何もない場所を見つめながら、そう呟いた。
少年は動けないこの状況にどうにか気が付いて欲しくて必死に声を出そうとする。
「……n!n…nn……!!」
聞き取れるとは思っていないが声が出せない中で精一杯に「助けて!」と叫ぶと女性は一瞬驚いた様に僕を見た。
「……君はどうして喋れるんだ!?」
「…nn!……n!」
呆気にとられながら彼女は僕に触れると、何かを唱えた。
「シンと繋がってしまったようだね。––––––––
目の前の女性が少年に触れながらそう唱えると、今までの緊張から一気に解放され溜め込まれた空気を全て出す様に息を吐きながら、少年は膝から崩れ落ち地面にへたり込んでしまった。
「ハァ…ハァ……や、やぁ、助けてくれてありがとう」
「えぇ。気にすることはない…だが、どうして君はこの領域内で普通にしていられる?」
助けてくれたお礼はあっさり流されたかと思うと、彼女はわけのわからないことを尋ねられ僕は言葉がなにも出ずにいた。
「……いや、え?」
「ここは
彼女は若干混乱した様に、落ち着きがなく右へ左へと歩き回る。
「……普通の人間?シン?アストラル体?…なんて?」
突如理解不能な言葉を使って喋り出した彼女に困惑していると、彼女もなぜか困惑した様子で僕になぜかと聞いてきた。
「さっきからなに言ってるのかさっぱりわからないけど、あの黒い影はどうなったの?」
「シンの事か。アレは君を助けた段階で逃げてしまったよ。だがそれよりも君の方が問題だ。一体何者なんだ?」
「…何者と言われても、ただの高校生としか答えようがないです…」
少年はそう答えるが目の前で歩き回る彼女は納得していない様子に見える。
すると彼女は何かに悩んでいたかと思えば立ち止まり軽く息を吐き少年を見た。
「君が見た黒い影というのは
「……私たちと同じ存在って、あなたは普通の人間じゃないんですか?」
黒い影がなんなのかを知っていて、渋谷の街にいた人を一瞬で消してしまう様な人に普通の人じゃないのか?なんて聞くのはすごく馬鹿だな。
苦笑しながらそう言うと彼女は地べたに座り込んでいる僕を真っ直ぐと見つめ、静かに言った。
「……私は––––––…”
*
夕焼けの光が世界を照らしているが太陽は紫紺色をしていた。
白い灰が辺り一面に広がり、辺りには水面に浮かぶ油の様に角度によって色を変える朽ち果てた樹木が至る所に生えている。
そんな夕焼けの世界に土煙が舞い上がると一点の染みのように黒い影がポツリと佇んでいた。
何もないはずの顔に突如裂け目が入ると、その裂け目はみるみる広がっていき口ができた。
影はできたばかりの口を大きく開くと、怒り狂ったかの様に天に叫声をあげた。
「キギャアアアアアァァァァ!!!」
––今までいくつもの魂を喰らったが、どれもイマイチだった––
––だが今日見つけたあの魂は別格だと本能が告げている––
––あと一歩だった…あの魂を喰らえるはずだったのに忌々しい能力者に邪魔された––
シンは冷静さを取り戻す様に呼吸を整えマーキングしたあの魂を探し出すと再び、界を渡った。
*
「じゃあこういう事?この地球にはずっと昔から人間を襲い、魂を喰らう異世界の怪物シンがいて。それと同時に古くから特殊な能力を持つ人間もいた。その特殊能力を持つ人達のことを
目の前で腰に手を当てながら話す金髪の女性から語られた事実は、どれも漫画やアニメに小説などで語られる様な内容ばかりで、とても信じられる内容ではなかった。だけど自分にしか見えない黒い影も、この誰もいない空間も…何より謎の力で動けなくなった僕を助け出した事からも、自分は魔女だと言う目の前の彼女の話を信じるのには十分な出来事な気がした。
「でもおかしいですよ!僕は特殊能力なんてないのになんでそのシンが見えるんですか!?」
「それはわからない。何かをキッカケに目覚める可能性は十分にあり得る。だから君が能力保持者だとしてもなんも不思議ではないよ」
冷静に考えながらそう答え付けた女性は目の前で座り込んでいる少年を見ながらそう言うと手を差し出してきた。
「ほら、さっさと行くよ」
僕は差し出されたエマの手を握ると、グイッと引っ張られ起き上がらせられた。
「え?行くってどこに?」
彼女はある一点を見つめながら体の向きはそのままに顔を少し横を向いて少年を見る。
「君が踏み込んでしまった世界がどう言うモノなのかを見に行くわよ」
「……え」
静寂が支配していた空間に突如けたたましい咆哮が轟いた。
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